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インタビュー
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生成AIやマテリアルズ・インフォマティクスの進化により、材料開発のスピードは劇的に向上しました。しかし、元富士フイルムの柳原氏は「AIですべてが解決するわけではない」と語ります。AIが普及すればするほど、基礎的なレベルまでは誰でも到達できるようになる。その時、日本のR&Dが持つ真の勝ち筋とは何か。
全4回の連載第2回は、AI時代における企業と顧客の関係、そして技術開発のあり方について、IBLC代表・国居が迫ります。

国居(IBLC): 前回は「なぜ新規事業をやるのか」という定義の話でしたが、今回はより具体的な戦略について伺います。AIがこれだけ進展すると、企業と顧客の関係性も変わってきます。AIが最適解を提示する時代に、企業はどのように戦えば良いのでしょうか。
柳原氏: マーケティングの視点で見ると、著者の佐藤尚之氏が極めて明確に指摘されていますが、AIが普及するとユーザー(顧客)は賢くなり、AIを使って商品を比較・選定するようになります。そうなると、単にスペックが良いだけの製品はAIによる比較の土俵に乗せられ、最終的には資本力のある企業が勝つマネーゲームになってしまう恐れがあります。
そこで重要になるのが、「ファン」の存在です。AIが選ぶのではなく、顧客自身が何らかの理由があって「この会社が好きだ」「この製品でないとダメだ」と指名買いをしてくれる。AIが決めたものではない関係性を作ることです。B to C だと「B to Fan to AI」と言ったりしますが、これはB to Bの世界でも言えることだと思います。
国居: B to B、特に材料メーカーにおける「ファン」とはどういうことでしょうか?
柳原氏: 例えばドイツには「隠れたチャンピオン」と呼ばれる企業群があります。彼らの一般知名度は低いかもしれませんが、特定のニッチ領域で世界シェアの大半を握っている超優良企業です。彼らは派手なマーケティングをしなくとも、向こうから注文が来ます。
それはなぜかと言えば、長年付き合ってきた実績があり、材料の技術だけでなく、「納期を絶対に守る」「信頼保証がある」といった、その会社に対する「信頼」があるからです。 これこそが、その会社に対する「ファン」を作っていることになると思うんですね。
AIができることはどんどんAIにやらせればいい。その分、ファン作りや信頼関係を作るといった、人間同士のネットワークをより大事にしていく時代になる。そこを大事にする企業にとっては、すごくいい風が吹いているのではないかと私は楽観的に見ています。

国居: 一方で、開発現場であるR&Dに目を向けると、時間軸が非常に短くなっています。特に上流の材料メーカーにとって、AI活用はどう影響するのでしょうか。
柳原氏: 材料開発において、マテリアルズ・インフォマティクスのようなAIの力を使った開発力というのはどんどん加速しますし、後発メーカーとの差は縮まると思います。AIを使えば、これまで経験の浅かった企業でも、ある程度のレベルまでは急速にキャッチアップできてしまいます。
ただ、すり合わせ的な話や経験知が役に立つ領域においては、AIで一瞬点数を稼いだとしても、その先上がっていく力が、継続的に上がっていく力がないので、すぐに飽和すると見ています。スピードは速く追いつくけれど、そこから先は追いつけない。イメージで言うと、「80点」まではすぐ来るかもしれないけれど、そこから先が来ない、ということが起こり得ます。
国居: 80点まではすぐに並ばれてしまうが、その先があるということですね。
柳原氏: そうです。たった今の状況を見ると「100点」が目標なんですが、10年後、20年後には「150点」が目標になる可能性がありますよね。そこに対して上がっていくためには、継続的な努力がいります。そうすると、AIによる飽和というか、漸近線(ぜんきんせん)がそこまで行かないんじゃないかと見ています。
まずお客さんのニーズに対して応えていく力、改良する力も含めて、これまでの既存の材料系メーカーの方が強い。その強さは、長い目で見たら維持できると思っています。
国居: なるほど。AIで到達できる80点の先、100点や150点を目指す継続的な力が日本の強みだと。そのためには、顧客ニーズをどう捉えるかが重要になりますね。
柳原氏: おっしゃる通りです。上流にいる材料メーカーの課題は、エンドユーザー(消費者)の顔が見えにくいことです。これまでは、川上と川下の間に情報の分断がありましたが、AI時代には情報収集のハードルが下がりますから、川上のメーカーも川下(市場)のトレンドを掴みやすくなっています。
だからこそ、材料メーカー同士、あるいは「川上の材料メーカー」と「川下の製品メーカー」が組む動きが重要になります。
国居: 材料同士のコラボレーションですね。
柳原氏: はい。例えば、C(消費者)に近い最終製品を開発している企業に対して、自分たちが革新的だと思っている材料を売り込み、組んで開発していく。あるタイヤメーカーのように、原料から最終製品まで垂直統合で完結しているモデルは最強ですが、全ての会社がそうできるわけではありません。だからこそ、サプライチェーンの中で適切なパートナーを見つけ、共に開発していく。そうしたやり方はすごく有効だと思います。
戦略や技術論の次は、それを実行する「人」に焦点を当てます。検索ツールが進化しても変わらない「問いを立てる力」とは何か? 情報の海でおぼれないための本質的なスキルについて深掘りします。
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