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インタビュー
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紙のパンチカードの時代に計算で化学を解き明かそうとした青年は、半世紀後、来年75歳を迎える。第1回はデータの価値、第2回は人が分かり合うこと。最終回は、三戸氏自身の哲学だ。
なぜ、いまも新しいことを学びたいと思えるのか。これは、誰かに何かを教える話ではない。一人の研究者が、自分は結局、何をやりたかったのか――を語った記録である。
目次
インタビュアー:ウェットとドライ、文化の違う人たちが一緒にやることで、何が生まれるのでしょう。
三戸氏:私は基本的に、イノベーションは異分野の『間』で起きると思っているんです。人間が考えることは、結局は過去のデータからですよね。同じ分野の人間同士だと、似た発想にしかならない。新しい発想が出てくるのは、自分が掘り下げているのとは違う観点で、何かが起きているのをたまたま知ったとき。それを自分のところにどう当てはめるか、悩んでいたことに『あ、これが引っかかる』と気づく。そこなんです。
ウェットなところは、ゴリゴリの化学。in silicoの計算科学は、化学ではあるけれど、どちらかというと物理や数学に近い。キャリアも、カルチャーも、もともと異質なんですね。だからこそ、その人たちをいかに連携させるかが、私のなかではずっと大事な使命でした。お互いに刺激を与え合えば、発見の見方も、実験のやり方も変わるかもしれない。
インタビュアー:異分野をつなぐという意味では、学会のような場も大きいですね。
三戸氏:私もいくつか学会の活動を続けていますが、どうしても、それぞれが自分の分野のなかで完結しがちです。本当はもっと、分野を越えてつながれるといいなと思っています。海外には、大きな傘のように全体を束ねて、そのなかにいろいろな分科会がある、という構造を持つところもある。日本でも、それぞれがもっと連携しやすい仕掛けがあると、産業界も含めた全体の底力につながるんじゃないか。これは産と学が一緒になって考えていくことだと思います。
個人としても、一つの学会(企業研究者の学会活動が少ないのも問題)だけでなく、いくつか違う分野のところに『遊び』で入ってみる。違う世界を見て、ネットワークを作ろうと努力する。『あの人は何をやっているのか』が分かれば、自分の方から助けを出せることもある。そういう動きが、もっとあっていいと思うんです。
インタビュアー:この対談を通じて、改めて感じられたことはありますか。
三戸氏:気づいたのは、結局、自分が何をやりたかったのか、ということなんです。モノづくりをどう加速させるか、新しい発見をどう引き出すか。そのために私は、計算科学というツールを使いながら切り込んでいきたかった。それが今、もっと違った形で進化して、使えるようになっている。限られたデータの相関解析しかできなかった時代から、暗黙知も含めた経験知を生かして、新しい発想を引き出せる世の中になってきている。
だから、誰かに言いたいというよりも、自分は本当に何をやりたかったんだろうな、と。会社を変えたい、そして、綺麗事ではなくて、世の中を少しでも変えたいな、と思って取り組んできたつもりです。エコな材料も含めてですよ。無駄な実験は、エコじゃないですからね。一人よがりの実験や計算ではなくて、いろいろな人を巻き込んだ場のなかで、異分野に興味を持つ。そこから、何か新しい世界が生まれてくるんじゃないかと。
インタビュアー:今のこの技術の進歩を武器にすれば、まだまだ大きなことができそうですね。
三戸氏:面白いんですよ。自分の過去の引き出しを並べ替えるだけじゃなくて、今の最先端を知りながら、お客様が困っていることと自分の知見を合わせて、次のヒントを出せる可能性がある。自分にもない知識を新たに知ることで、興奮できる。こういう仕事をやれるというのは、年を取らないのかもしれません。年は取るんだけれど、肉体的にはね。
私は来年75歳ですよ。でも、75歳でも、新しいことを勉強したいなって思う。目的なしに情報を集めるのは、なかなか難しい。でも、お客様から『これが問題なんだけど、どうだ』と言われると、『そういえば、こんなのがあったな』と。じゃあ少し、その周辺を調べてみようかという話になる。目的があれば、年を取っても学べるんです。
会社に入ってからは、ずっと一つの会社のなかにいましたからね。でも今は、やっぱり、外はすごく広い世界だなと感じています。
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