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台湾ではTSMCを中核にシリコンフォトニクスの産業エコシステムが急形成中だ。2024年にSEMI SiPhIAが発足、30社以上が参画し、市場は2030年に78.6億ドルへ成長する。本記事では台湾エコシステムと日本企業の連携動向を読み解く。
目次
シリコンフォトニクスとは、シリコンウエハ上に光学素子(導波路・変調器・受光器など)を形成する技術だ。CMOS製造プロセスとの互換性が高く、既存の半導体ファウンドリで量産できる点が最大の強みである。
CPO(Co-Packaged Optics)の光エンジンは、このシリコンフォトニクス技術で製造される。NVIDIAのQuantum-X PhotonicsスイッチもBroadcomのBaillyも、光回路部分はシリコンフォトニクスがベースだ。つまり、シリコンフォトニクスの製造エコシステムを押さえた地域が、光電融合時代のサプライチェーンの主導権を握ることになる。
台湾では2024年にシリコンフォトニクス関連の3つの産業連携が本格化した。
第一がSEMI SiPhIA(Silicon Photonics Industry Alliance)だ。2024年9月、台湾政府経済部とSEMIが共同で設立し、TSMC、ASE Holdings、MediaTek、Foxconn、Quanta Computerなど30社以上が参画する。IC設計からファウンドリ、パッケージング、最終製品までを網羅し、台湾国内でシリコンフォトニクスのエコシステムを一気に構築する狙いがある。SEMIは2030年のシリコンフォトニクス半導体市場を78.6億ドル(CAGR 25.7%)と予測している。
第二がHiSPA(International Alliance for Heterogeneous Integration of Silicon Photonics)で、台湾科技大学とPIDA(光電科技工業協進會)が2024年4月に設立した産学連携プラットフォームだ。UMC、ASE、Global Crystalなど30社以上が加盟し、異種材料集積(ヘテロジニアスインテグレーション)の研究開発と人材育成を担う。
第三がTSMCのOIP 3DFabric Allianceだ。CoWoS、InFO、SoICという3つの先端パッケージング技術を軸に、EDAベンダー(Synopsys、Cadence)からメモリメーカー(SK Hynix、Micron)、OSAT(ASE)まで、チップレット時代の製造エコシステムを形成している。
台湾政府はシリコンフォトニクスをAIインフラのトップ10プロジェクトに位置づけ、国家戦略として推進している。経済部産業発展署を通じ、2022年以降で4件のシリコンフォトニクス関連プロジェクトに補助金を投入。技術開発領域はウェハパッケージングとテスト設備が中心で、製造後工程のリーダーシップ確立を狙う。国家発展委員会の劉鏡清主任委員(TSMC取締役兼務)は「シリコンフォトニクスはAI分野で最も重要な技術」と明言しており、政府と産業界が一体の推進体制を敷いている。
TSMCは2022年6月、つくば市の産業技術総合研究所内に「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」を開設した。3次元パッケージング技術の量産化に向け、日本の材料メーカー・装置メーカーと共同研究を行う拠点だ。
パートナーには旭化成、イビデン、レゾナック、信越化学、新光電気工業など14社の材料メーカーと、キーエンス、島津製作所、日立ハイテクなど6社の装置メーカーが参画する。TSMCが日本を選んだ理由は「3次元パッケージング技術には材料・装置メーカーとの協力が不可欠で、それらは日本にある」ためだ。同センターは量産直結型の技術開発を進めている。
台湾エコシステムの形成は、日本企業にとって脅威であると同時に最大の商機だ。2024年のTSMC優秀サプライヤー表彰では27社中14社が日本企業であり、材料技術の不可欠さが証明されている。
一方、台湾はSiPhIA内で光コネクタの内製化も模索している。TSMCは住友電工への依存度を下げ、台湾企業の上詮光繊通信(FOCI)とFAU開発を進める動きがある。日本企業の参入ポイントは、ABF(味の素)、パッケージ基板(新光電気・イビデン)、光導波路材料(AGC・DNP)、UV硬化接着剤(レゾナック)、光ファイバ接続(住友電工)だ。「代替不可能な材料技術」で台湾エコシステムの中核に食い込めるかが鍵となる。
シリコンフォトニクスの産業エコシステムは、台湾政府主導で急速に形成が進んでいる。SEMI SiPhIA、HiSPA、OIP 3DFabric Allianceという3つのアライアンスが製造基盤を固め、2030年の78.6億ドル市場を狙う構図だ。日本企業はTSMCジャパン3DICセンターを通じた共同開発で「量産直結型」の関係を築きつつあるが、台湾側の内製化の動きにも注意が必要だ。「代替不可能な材料技術」を武器に、エコシステムの中核に食い込む戦略が求められる。
本コラムは、これまでIBLCが蓄積してきた技術・市場に関する情報をもとに、IBLC専門家チームが独自の視点で整理・考察したものです。
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