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2026/5/14

光電融合デバイスの部素材と日本企業の勝ち筋|CPO実装に必要な材料技術 #022

技術の潮流を読む

CPOの量産化にはパッケージ基板・光導波路・光変調器・接着剤の革新が不可欠だ。日本材料メーカーはABF・低CTE材料・ポリマー光導波路で世界をリードし、CPOサプライチェーンの「実装の心臓部」を握る。本記事では各部素材の技術動向と日本企業の勝ち筋を読み解く。

目次

1. 光電融合デバイスの部素材|CPO実装を支える材料技術の全体像

CPOはASICと光エンジンを同一パッケージ基板上に実装する技術だ。この実装には従来の半導体パッケージ材料に加え、光学特性を持つ新カテゴリの部素材が求められる。主要な部素材はパッケージ基板、ビルドアップ材料、接着剤、光導波路、光変調器の5つだ。NVIDIAやTSMCが言及するCPO実装の課題——熱管理、歩留、接続精度、光損失——はすべて材料技術で解決される領域であり、ここに日本企業の商機がある。

2. 光変調器の材料競争|Si・InP・LN・ポリマー4方式の比較

光変調器はCPOの性能を左右する重要部品だ。電気信号を光信号に変換する際の強度・位相・周波数を制御するデバイスであり、そのビットレートと消費電力が光I/O全体の性能を決定する。

現在、4つの材料方式が競合している。シリコン(Si)系はCMOS互換で量産性に優れるが、高速応答性に限界がある。TSMC・NVIDIAが現時点で採用するマイクロリング変調器はこの方式だ。InP系は駆動電圧が低く帯域も広い。三菱電機がInP材料でレーザと光変調器を一体化した光エンジンを開発している。LN(ニオブ酸リチウム)系は100GHz級の超高速応答が可能で、TDKがスパッタリング法によるLN薄膜形成技術で参入を目指す。有機ポリマー系は超高速かつ低駆動電圧で理論上最も有望だが、熱安定性・長期劣化が課題だ。九州大学の横山教授が100℃以上の環境でも性能劣化がないデバイス信頼性を確認している。

現実的なロードマップとしては、「シリコンで量産を先行し、材料技術の成熟を待ってポリマーへ」という二段構えが予測される。

3. パッケージ基板の選択|有機樹脂とガラスの二つの道

光I/O時代のパッケージ基板は、従来の有機樹脂基板に加え、ガラス基板という選択肢が浮上している。

有機樹脂基板は量産実績が豊富で低コストだが、基板自体は光を通さないため、別途ポリマー光導波路を形成する必要がある。IBMがCPO実装でポリマー光ファンアウト層を採用した例がある。一方、ガラス基板は透明性を活かして基板内に直接光導波路を形成でき、表面の高い平坦性から微細なRDL配線にも対応する。将来的にはシリコンインターポーザを省略した基板一体型の光電融合が実現可能だ。

AGCはポリマー導波路とガラス導波路の両面で開発を進め、OFC 2025でガラスパッケージ基板を参考出展した。DNPはチップレット集積を想定したガラスパッケージ基板を試作し、2035年頃の製品化を見据える。基板サイズが大型化するチップレット集積では、ガラスの低伝送損失・低熱膨張係数の強みがより発揮される。

4. 日本材料メーカーの強み|CPOが求める3つの技術領域

CPOは「光ICと電子ICを繋ぐ実装・材料技術」が核心であり、日本の材料メーカーなしには成立しにくい構造となっている。日本企業の強みは3つの領域に集中している。

第一は微細配線・低損失化だ。112G/224G PAM4対応のSerDesに必要な低誘電率・低誘電正接材料で、味の素のABFは既にグローバル標準だ。第二は熱対策・信頼性だ。レーザ・光変調器・電子ICが密に共存するCPOでは、CTE制御材料や熱伝導性フィラーが不可欠であり、日本企業がリードする領域だ。第三は光導波路・光実装のハイブリッド化で、シリコンフォトニクス導波路と基板内導波路、光ファイバを高精度に接続する技術が求められる。

レゾナックはCPO向けUV硬化接着剤で、短時間硬化と高耐久性を両立させた開発品を発表した。住友電気工業は3Dプリンティングによるビームエキスパンディングレンズで、PICと光ファイバの位置ずれ許容範囲を10倍に拡大する接続技術を開発している。

5. 次世代光I/O|Ayar Labsとチップレット光化の最前線

CPOの先に見える次世代技術が光I/Oだ。チップレベルで電気信号と光信号を直接変換し、チップ間通信を完全に光で行う。スタートアップのAyar Labsは、TSMCなどの標準CMOSプロセスで製造可能な光I/Oチップレット「TeraPHY」を開発し、NVIDIA、AMD、Intel、GlobalFoundriesから累計3億7,000万ドルの出資を受けている。2024年12月にはNTTドコモ・ベンチャーズも出資に加わった。

光I/Oが本格化する2028年以降は、パッケージ基板内での光伝送が現実となり、基板メーカーの役割が根本的に変わる。有機樹脂基板にポリマー光導波路を形成するか、ガラス基板で基板一体型の光電融合を実現するか——この選択が、素材メーカーの次の10年を決める。

6. まとめ|光電融合の部素材で日本企業が握る「実装の心臓部」

光電融合デバイスの量産化は、NVIDIA・TSMC・Broadcomが主導するが、その実現を支えるのは部素材と実装技術だ。日本企業はABF・低CTE材料・ポリマー光導波路・UV硬化接着剤・光ファイバ接続技術という「CPOの心臓部」で確固たるポジションを持つ。台湾TSMC/OSAT企業との連携を強化し、材料仕様を国際標準(OIF、COBO、IEEE)に組み込むことが、グローバルサプライチェーンでの地位確立への最短経路となる。


本コラムは、これまでIBLCが蓄積してきた技術・市場に関する情報をもとに、IBLC専門家チームが独自の視点で整理・考察したものです。

▼【光電融合デバイス部素材に関する技術・市場調査】

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