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技術の潮流を読む

2026/5/7

CPOとは?NVIDIA・TSMCも注力するAI半導体向け次世代実装技術 #021

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AI半導体の進化に伴い、チップ間のデータ伝送速度がボトルネックになりつつあります。この壁を破る技術として、半導体パッケージの中に「光通信機能」を組み込む「CPO(Co-Packaged Optics)」が急速に脚光を浴びています。

本記事では、2026年頃から本格的な市場形成が予測されるCPOについて、その仕組みやメリット、BroadcomやTSMCなど主要プレイヤーの動向を解説します。

目次

1.「電気」から「光」へ:配線の限界

プラガブルからCPOへの移行

現在、データセンターのスイッチなどの機器では、電気信号を光信号に変換する「光トランシーバー(プラガブルモジュール)」をフロントパネルに差し込んで使用するのが一般的です。しかし、スイッチASIC(特定用途向け集積回路)の処理能力が向上するにつれ、ASICからフロントパネルまでの基板上の「電気配線」での信号劣化や消費電力の増大が無視できなくなってきました。

そこで考案されたのがCPOです。CPOは、光エンジン(光電変換を行う部品)をASICと同じパッケージ基板上に実装します。これにより、電気信号が流れる距離を極限まで短くし、伝送損失と消費電力を劇的に削減します。

CPOがもたらすメリット

1. 省電力化:Broadcomの発表によると、CPO技術を用いたスイッチは、従来のプラガブルソリューションと比較して消費電力を70%削減できるとしています。

2. 高密度化:シリコン面積効率が向上し、よりコンパクトな装置設計が可能になります。

3. 高速化:電気配線の距離が短くなることで、信号の劣化を防ぎ、テラビット級の高速通信に対応できます。

2. CPOと「光電融合」——IOWN構想が描くロードマップ

CPOを語る上で欠かせないのが、より大きな技術潮流である光電融合の文脈です。光電融合とは、これまで別々に進化してきた通信技術(光)と情報処理技術(電気)を融合させる技術体系を指します。NTTが提唱するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想では、この光電融合を4段階のロードマップで描いています。

IOWN 1.0〜2.0の段階では、サーバー内に別々に搭載されていたプロセッサと光トランシーバーを同一パッケージ内に収容する——まさにCPOが主役となるフェーズです。続くIOWN 3.0ではシリコンフォトニクスにより半導体基板上に光導波路を形成し、最終段階のIOWN 4.0ではCPU・GPUそのものを光で動作させるオールフォトニクスネットワーク(APN)を目指します。

重要なのは、CPOやシリコンフォトニクスの技術開発はIOWN構想とは独立して進んでいる点です。IOWN構想前から次世代技術としてシリコンフォトニクスの研究開発が進められており、CPOとシリコンフォトニクスはIOWNと同じ方向を指向しつつも同期はしていません。つまり、IOWNの成否に関わらず、光電融合によるサプライチェーンの変化は確実に起こると見られています。

3. 主要プレイヤーの動向と戦略

CPOは、従来の「光トランシーバーメーカー」の領域を、半導体メーカーやファウンドリが取り込む技術転換でもあります。

Broadcom(ブロードコム)

CPO開発の先陣を切っているのが米Broadcomです。2024年3月、同社は業界初となる51.2TbpsのCPOスイッチ「Bailly」を発表しました。多数の光部品とトランジスタを集積し、圧倒的な省電力性能をアピールしています。

Intel(インテル)

Intelは、シリコンフォトニクス技術をベースにした「OCI(Optical Compute Interconnect)チップレット」を開発しています。これを次世代のCPUやGPUとパッケージ内で統合することで、帯域幅の拡大と低遅延を実現しようとしています。3.5Dパッケージング技術など、高度な実装技術が強みです。

TSMC

世界最大のファウンドリであるTSMCも、CPOに本腰を入れています。2025年には「COUPE」と呼ばれる光エンジン技術を導入し、2026年には「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」技術を用いてCPOを商用化する計画です。TSMCのエコシステムに乗ることで、NVIDIAなどのAIチップメーカーもCPOの採用を加速させると見られます。

4. CPO普及の課題とサプライチェーンの変化

技術的課題

CPOの課題の一つは「熱」です。発熱量の大きいASICのすぐそばに、熱に弱いレーザー光源を配置する必要があるため、高度な熱管理が求められます。そのため、光源を外部に置く「外部光源(ELS)」方式も検討されています。また、故障時の交換が難しいというメンテナンス性の課題もあります。

サプライチェーンの激変

CPOが普及すると、これまでサーバーメーカーやスイッチメーカーが後付けで購入していた光トランシーバーが、半導体パッケージの一部として組み込まれることになります。つまり、サプライチェーンの主導権が、従来の光モジュールメーカーから、半導体メーカーやOSAT(後工程受託企業)へとシフトする可能性があります。

さらに2028年以降、シリコンフォトニクスが本格化すると、半導体基板上に光導波路を直接形成し光変調器を搭載する形態へと進化します。従来の光トランシーバーメーカーの機能がプロセッサ内部に吸収され、基板メーカーが光導波路形成のキーサプライヤとして浮上する——サプライチェーンの更なる再編が予想されています。

5. まとめ

CPOは、ムーアの法則の限界を超えてコンピューティング性能を向上させるための不可欠な技術となりつつあります。2028年〜2030年頃にはシリコンフォトニクス技術と融合し、本格的な普及期を迎えると予想されます。半導体業界、通信業界、そして素材業界を巻き込んだ大きなパラダイムシフトが始まっています。


本コラムは、これまでIBLCが蓄積してきた技術・市場に関する情報をもとに、IBLC専門家チームが独自の視点で整理・考察したものです。

▼【CPO・光電融合に関する技術・市場調査】

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