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インタビュー

2026/6/17

【半導体40年|第3回/全3回】 「お前は技術者か」と言われた夜から――失敗が変えた技術者の発想

インタビュー

「お前は技術者か」――。お客さんで問題が発覚して謝りに行った日、半導体ベテラン吉田章人氏は、そう言われたこともあるといいます。3度の叱責から学んだのは、出荷前の発想を変えること、そして「10個飛ばして1個当たればいい」という研究開発のフレキシビリティ。連載最終回となる第3回は、失敗哲学から、R&Dと事業部の両方を経験して見えた仕事観、そして次世代の技術者へのメッセージまで――半導体ベテランの言葉を伺います。

目次

1. 「これで量産しましょう」の翌日、お客さんの設備を壊した

大澤(IBLC): 前回はPoPの成功体験と、日本の材料メーカーの強さについてお伺いしました。一方で、失敗体験というか、転機になった部分のお話もぜひ伺いたいのですが。

吉田氏: 失敗例はいろいろありますが、特に東芝の時のことですね。新しいパッケージと製品の開発をして、お客さんから認定をいただいて、「よかった、これで量産しましょう」となった次の日に、お客さんのところの設備を壊してしまった、というか。

大澤(IBLC): 認定の翌日に、ですか。

吉田氏: 輸送テストが不十分で、綺麗に梱包していた製品が、輸送中に少し中で崩れていたのに気付かないまま、そのままお客さんがセットしてボタンを押したら設備が壊れてしまった。その後すぐお客さんのところに行きまして、徹夜で全製品の梱包をしなおしたりとか、そういう思い出があります。

2. 「お前は技術者か」――3回の叱責が変えた、出荷前の発想

大澤(IBLC): Amkorに移ってからも、似たような経験があったのですね。

吉田氏: Amkorでも、厚みがこの規格ですと言ったのに、ちょっと規格を超えてしまっていて、お客さんがテストしたら壊れた。怒られに行きましたね。「なんだこれは」と。他にも「お前は技術者か」と言われたこともあります。

大澤(IBLC): 厳しい場面ですね……。

吉田氏: でもそういう厳しい叱咤があって、もっとしっかり押さえなくてはいけないなと、何がいけないのか、いろいろなことを考えて、出荷する前に「こんなことが起こるんじゃないか、あんなことが起こるんじゃないか」と考えるようになりました。お客さんのところでむちゃくちゃ怒られたことが今までで3回くらいありますかね。今となってはいい経験だったと思います。

大澤(IBLC): 対応はどのようにされていたのですか。

吉田氏: 対策はもう本当に謝って、あとは全力でそれだけに集中して、何回かお客さんのところに行って徹夜で自分で対応したこともあります。

3. 自分の製品だ、と感じる日本のお客さん

大澤(IBLC): そういう失敗の場面で、日本とアメリカのお客さん側の対応の差みたいなものはあるのでしょうか。

吉田氏: 日本のお客さんは結構エモーショナルというか、自分のものという感じで、「どうすんだ!」という感じで言ってきます。アメリカの場合は、その時の失敗のレベルが違うのかもしれませんが、あまりそういうのは感じたことがないですね。日本の方がみんな、その製品を自分の製品、自分のものと思って意見する人が多いかなと思います。

大澤(IBLC): なるほど。もう、何か一体感というか。

吉田氏: 一体感は出ますね。最後解決した時はもう、すごく一体感が出ます。一緒に飲みに行ったりもしました。

4. R&Dと事業部、両方の視点から見えたバランス

大澤(IBLC): 色々な職歴を経験されていますが、自分の中で一番知見が溜まったというところはどこになりますでしょうか。

吉田氏: 今までの経歴の中で関わってきたことが大きく2つあって、1つが事業部、本当にその製品をやって儲かるか儲からないかというところ。もう1つが技術のR&D、先端技術がどうなっていくのかというところ。その両方をやったので、技術開発をしながら、本当に製品として成功しそうなのはこれかなというのを判断するのに、事業部とR&D両方経験したのは良かったと思いますね。

大澤(IBLC): 両方経験して見えてくる景色は、随分違うのでしょうね。

吉田氏: 全く逆なのです。R&Dは新しい技術にお金を使って開発しよう、事業部は儲からないといけないのでそんなものにお金は使えない、と。R&Dにいた時はもっとお金が欲しいと言いながら、事業部に来ると、そんなお金は出せない、と。じゃあそこのバランスはどこか、というのは自分で考えなくてはいけないので。

大澤(IBLC): そのバランスは、どう取られているのですか。

吉田氏: やはりお客さんがまず見えているかどうかと、あと技術開発と言っても本当にピュアな技術研究開発か、それともちょっとプラスすればできるような新しい技術か。その辺を見極めて、ですね。

5. 「10個飛ばして1個」「1工程だけ変える」――研究開発の哲学

大澤(IBLC): PoPはまさに、ちょっとプラスすればできる新しい技術だったわけですか。

吉田氏: PoPをやった時というのは、本当にちょっとだけ、従来の工程に1工程だけ変えるとできたのです、新しい技術導入で。作るプロセスが10あるとすると、そのうちの1だけプロセスを変える――装置を買ってプロセスを変えると、作れるような構造でした。そういうものは、成功した時の利益が大きい。逆に、全ての工程を全部投資するとなると、よほどの判断と覚悟が必要になりますね。お客さんがいないとなかなかやりづらいので。

大澤(IBLC): 研究開発の進め方として、ご自身の哲学はありますか。

吉田氏: 研究開発というのは、「こっちに行くぞ」と1個だけやっても当たるものではなくて、よく友人と話すのは、10個くらい何か打ち上げて、その中の1個当たればいいのではないか、と。全部を勢いよく飛ばしてもお金がかかってしまうので、ちょっと飛ばしながら様子を見て、こっちの方向と決めたらそちらにもう少しウェイトを置いていく、時間をかけることによって方向を変えていく、そういうフレキシビリティが重要だと思います。

大澤(IBLC): そのあたりは日米でアプローチが違いますか。

吉田氏: 日本人は会議好きなのでずっと会議して方向を決めて、1回決めるとそのままなかなか変更しません。アメリカでは「とりあえず行こう」という感じで、10個でも飛ばしながら、こっちかなと決めたらそちらにだんだん力を入れていく――というあたりが日本とアメリカの違いかなと思います。

6. 嫌な配属も1年やってみたら――次世代へのメッセージ

大澤(IBLC): 最後に、若い方々や現役でいらっしゃる方々へメッセージをいただければと思います。

吉田氏: 自分の経験でやはり一番ショッキングだったのは、前工程から後工程に急に担当を変えられたことです。自分で事業部に行きたいと言ったのですから自分の責任なのですが、その時は少しショックを受けました。それでも、何かしら少し「え」と思うような仕事になったとしても、しばらく続けてみたら面白いことがあるかも、と思います。

大澤(IBLC): 実際、その「嫌な配属」が、その後のキャリアの土台になったわけですよね。

吉田氏: そうですね。最近の方はすぐ辞めてしまうとも聞きますが、2、3年くらいは、せいぜい1年でもいいので、ちょっとやってみたら、という感じがします。その後で、自分の人生が変わってしまったので。パッケージの方が面白いと思い始めて、アメリカに来ることになって、今それをネタに自分で仕事もしていますし。少なくとも1年はやってみたらいいのではないかな、と思います。

大澤(IBLC): 本日は貴重なお話をありがとうございました。

吉田氏: こちらこそ、ありがとうございました。

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