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座談会

2026/8/12

【AIと情報通信|第3回/全4回】 5Gはなぜ失敗し、6G・NTNは同じ轍を踏むのか

座談会

前回は、光電融合の実用化フェーズと、日本の材料産業に残された勝ち筋を語ってもらった。第3回は視点を変えて、「なぜ5Gは期待されたほどの成功を収められなかったのか」、そして6G・非地上系ネットワーク(NTN)は同じ轍を踏むのかを議論する。

この記事のポイント

  • 5Gが伸びなかったのは技術ではなく「キラーアプリの不在」。4Gでニーズが充足し、新市場を作れなかった。6Gも同じ轍を踏む懸念がある。

  • インフラは「安く太いパイプを作れば使い手が現れる」の歴史。ただ当てるのはインフラ屋ではなく“使う側”で、日本はその担い手が現れにくい。

  • ミリ波は直進性が強く用途が限られ、実質フィックスド・ワイヤレスに落ち着きつつある。重い基地局投資も課題。

  • スターリンク依存は有事に“首根っこを抑えられる”リスク。災害・安全保障の観点から、日本独自の衛星・通信基盤の必要性が指摘された。


インタビュアー: 5Gはどうしてダメだったのか、6Gのところに話を移したいと思います。技術的にダメだったというわけではなく、まず反省からということでしょうか。何が足りなかったのでしょう。日本だけでなく世界的な話でもありますよね。

堀: そういう意見です、私はもう。5Gをやっている人たちに向かって、そういう風に言っていましたから。「何に使うのかわからないですよね」って。だって、ストリーミング以上のスピードを求めるアプリがなかったですよね。それを誰も提示しないまま標準化をやっていましたから、これはダメだな、という風に思っていましたけどね。

インタビュアー: それが、AIの世界になって6Gになって、何か変わったりするのでしょうか。

堀: 変わってないでしょうね、きっと(笑)。6Gをやっている人からも、キラーアプリを一言も聞いたことがないですし、言っていることが5Gとあんまり変わってないんですよ。

インタビュアー: データセンターの話やモバイルデータセンターということになってくると、特徴を出した通信技術が必要になったりしないでしょうか。

堀: 基本的に僕、光でいいんじゃないかと思っているので、無線である必要がどこまであるのかな、という感じがします。チップ内の短いところを無線でやる、という話はあると思うんですけど、6Gの業界で言っていることとはあんまり関係ないかな、という感じがしていますけどね。よくわからないですね、今でも、私自身は。

崎浦: 私は完全に理由が分かっていて。2Gまではどこでも連絡が取れる。3Gになったら世界とデータ交換ができる。4Gになったら、いつでもどこでもビデオが見れる。そこでユーザーのニーズが充足しちゃったんですね。だから5Gになったときに、新たな市場を創出しなきゃいけないんだけど、そういう見方をしていなかったんです。それが5Gの、まず基本的な失敗だと思います。

インタビュアー: それが6Gになって、今後変わったりしないのでしょうか。

崎浦: 全くないですね。6Gも5Gの二の舞だと思います。

山崎: 私も通信会社にいたものですからね、よく分かるんですけれども、インフラ屋というのは、土管屋とよく言われますが、土管を作れば、使うのは使う人がいろいろ考えてくれるだろう、と、まず、このインフラを整備するのが重要だ、と考えるものです。光通信でも同じです。ファイバーを1000本引いて、もう余って余ってしょうがない、何か使い方を考えろ、と言われ、その頃も映像とか何とか使い方を考えたけれど、全然ダメだったんですね。インフラというのは、安いものを作っておけば、どうせ10年20年の間には、使う人が現れる。たまたま5Gのときはそういう人たちが現れなかったということではないでしょうか。今ね、映像なんかをAIがパッと作ってくれますよね。ああいうものがどんどん流通するようになると、もしかすると増えるかもしれない。あるいはAR、VRというやつですかね。やっぱりインフラ屋が考えるんじゃなくて、使う人が考える、ですね。儲けたいと思う人が考える。

国居: それ、使う人って誰ですか。

山崎: 急に現れるんですよ。急に現れる。

国居: それ、日本で現れてこない。

山崎: 日本に現れるか、あるいは海外で現れるかわからないですけど、急にね。だって、Netflixと同じ仕組みのものを私が入社した頃にやっていましたから。昔からあるんですよ、考え方は。やっぱり、ある時に安く通信ができる、というのでああやって広がった。実は、通信よりも問題はコンテンツをどう集めるか、ということでした。

国居: 日本でも「昔それ考えてたんだよね」とかね、「昔あったんだよね」と。だからそれなのに、結局こう、市場を取れないとか、なかなか覇権になれないとか。やっぱり大きな違いがあるんじゃないですか。

山崎: わからないですね。私も通信の使い方ということで、4Kシネマをやっていた時代があるんです。当然、配信は考えるんだけど、Netflixにはなれなかった。なんでだろう、よくわからないですけど。やっぱり目の付け所が違うのですね。彼らは、自分で映画まで作っちゃいますからね。

吉本: そうですね。やっぱりそこも投資のような気がします。それで言うと、AIのニーズというのがあるから、6Gがそういうニーズに合わせて作り込まれてくる、という可能性ってないんですか。そうなると、ニーズも出てきて、投資もそれなりにできるという好循環になる可能性が。

山崎: 好循環になるというか、足りなくなっちゃうんですよ。まあ足りないでしょうから、という感じになってきて、どんどん値段が下がっていくんです。

吉本: データコムとテレコムのところで言うと、基地局がもはやサーバーになってしまうと。それって、もう完全にデータコムが支配している世界になっちゃって、そうするともうデータを取り扱うツールにしかならなくなる。そうなったら多分、ニーズを見ながらものが進んでいく形になれば、多少良くなる、という話はないのかな、という風には思うんですけど。

山崎: それも難しくて。投資かニーズか、という話で、ニーズを見ながら投資していたら遅れちゃうわけですよ。金をかければなんとかなる、というこの世界です。

国居: だから、ニーズを生み出す仕掛けというか、それがやっぱり海外にはあるんじゃないですか。中国がああいう国策としてやるのもそうですよね。結局、自らが市場を作る、というか、壊しちゃって、壊すことによって新しいものを生み出そう、みたいな。そこからニーズというものが作られていく。日本の場合は、どっちかというと後追いですよね。

崎浦: 5Gなんかまさに、中国が作って壊しちゃった、みたいな。

国居: ファーウェイの件もそうだし、みんなそうですよね。この産業を取ろうと思ったときには、一回市場を潰しちゃうくらいのことをやってから、イニシアチブを取る、みたいな。

崎浦: 中国は国家主導で計画的に動く国ですよね。国の方針に沿って一気に進める強みはあるけれど、その分、ボトムアップで新しいものが次々生まれるダイナミズムは、やはりアメリカの方が強い。そこはアメリカに一日の長があるな、という風には思っています。

インタビュアー: 6Gの話は、NTNも含めて宇宙と地球が繋がる形になっていきます。ビジネスモデルを考えておかなければ、5Gと同じことが起きるのではないでしょうか。

吉本: ヒントとしては、スターリンクみたいなやつはもうすでにありますからね。しかも、キャリアがもう知らないうちに仕込んでいて、知らないうちに衛星マークがつく、というところまで来ちゃっているので、あれが当たり前になっちゃっているところはありますよね。

吉本: 5Gの市場で言うと、配信容量が100倍になります、とか、速度が20倍になります、みたいな数字がバーンと出てきて、そのうち出てきたのが「ミリ波をやります」とか言っているけど、結局ミリ波って直進性が強すぎて、都市部の見えるところでしか使えません、みたいな話に落ちて。見てみれば、結局サブ6の方が圧倒的にある、という。なんで、そんなものを作ったんだろう、というのは、すごく素朴な疑問なんですよね。

山崎: インフラというのはパイプを太くしたい。パイプを太くして安くすると、使ってくれる人が現れる。それがまあ、今までの何十年の歴史です。自分たちはちょっとダメだったんですけれども、やっぱり頭のいいやつがいっぱいいるな、と。インフラの、ネクタイを締めている人間が考えても、これは無理。一生懸命当ててやろうという、そういう人たちが考えて当たるといいんですけど、当たらない。これはやっぱり、役割分担みたいなのがあるんだと思います。それを全部やると、中国と同じで、全体を考えて計画経済になっちゃいますから。

崎浦: 他に行きようがないんですよね、ミリ波って。まあ、ダメですよね、もう。今のうちにミリ波に手を出しておかないと技術開発が進まないので、やっておかざるを得ない、というところからやったんだと思うんですけど、やっぱりダメだった、という。

吉本: 結局そのために基地局投資がものすごく重たくなっていて。一時期、基地局をキャリア間でシェアしようか、みたいな話、あったじゃないですか。

山崎: ミリ波はそんなに投資していないんですよ。むしろ投資して失敗したのは、ベライゾンでしたっけ。投資して、全然ダメだ、ということで方向転換しました。ミリ波をやっている人に聞くと、今回が何回目の波かというと、4回目の波だ、と。だいたい十年周期ぐらいですかね。下から帯域が詰まっていくと、いずれ次の波が来る。

吉本:結局、ミリ波を何に使うかというと、フィックスド・ワイヤレスとか言って、今、固定の中に引っ込む、みたいな話になっちゃっているんだけど、あれ、もともと本流ではない。

崎浦: 基地局って、最終的に地球上の人口の倍の数が必要だ、という人がいるんですね。今140億個くらい必要になる、ということなんです。多分、家電量販店で基地局を売るような世界にならないと、無理ですね。そこまでコモディティ化しないと。

山崎: むしろデータコムとテレコムの入り口じゃないですけど、これからデータコムですよね、Wi-Fi。これが、テレコムの世界をどんどん食っていく可能性もゼロじゃない。今はWi-Fi 7とかやっていて、5G以上のものを持っています。そうなると、地球の人口の倍くらいできる、インフラが。皆さんの携帯が全部基地局ですから。

インタビュアー: 地上通信との融合、衛星間の光通信は実現できていくのでしょうか。

崎浦: もう載っかっているというんですけど、使っているという話は聞いたことがないんです。スターリンクの衛星には載っているみたいですが、今のところ多分、地上だけでやっているんだ、地上とここだけでやっている。何か、ハブみたいなのがある。ただ、装置自身は載っている、という話は聞いています。

インタビュアー: 災害対策やインフラ用途としては、NTNのニーズは間違いなくありそうですね。

山崎: あるんですが、スターリンクで本当にいいのか、という話があるわけですよ。有事になったときに、スターリンクを切られて、首根っこを抑えられている状態。こんなことあり得ないですよね。国家権力以上の権力者みたいな。

インタビュアー: スターリンクではなく、日本独自のものを創っていく動きはあるのでしょうか。

山崎: ロケットの打ち上げに成功したから、あれをどんどん打ち上げようとしているんじゃないですか。

インタビュアー: それは国家戦略として、考えられていないものでしょうか。

吉本: みちびきみたいなやつは、GPSに頼りたくない、という測位をよくやりましょう、みたいな話はありますけど、通信の話はない。

山崎: でも、途端に、アメリカと戦争するとかいうと、もうアウトですよね。

吉本: 今、これしかないので、結局、自治体なんかはみんなスターリンクになっちゃってる。国家戦略で災害対策と言ったら、結局、衛星通信しないとしょうがないじゃない。だから、そういうところに何で投資しないんですか、みたいな話はありますよね。

インタビュアー: 海底ケーブルが切られるリスクもあります。宇宙基本法という法律もありますが、その先はあまり進んでいないようですね。

山崎: あれ、いくら衛星を上げても自由なんですか。

崎浦: 私も考えていたんですけど、今は全然規制がないと思います。土地代を払わなくてもいい。

インタビュアー: 宇宙ゴミ(デブリ)の回収ビジネスも、本来はもっと出てきていいはずですよね。

崎浦: 打ち上げっぱなしで回収しないのは中国ですからね。日本は、落とすか、回収するか、大気圏内で燃やすか、いずれかの方法で処分しています。中国の場合は4年くらいでだいたい使命を終えて、低軌道のやつは落ちてくる。燃え残りは、そのままドーンですからね。

(宇宙通信の話は、最終回で語られる2035年の未来像にもつながっていく。第4回へ続く)

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