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座談会

2026/7/16

【AIと情報通信|第1回/全4回】 AIバブルは、いつ弾けるのか──データセンター逼迫の最前線

座談会

生成AIの普及で、データセンターの電力と通信帯域はかつてない逼迫を迎えている。鍵を握るとされるのが「光電融合」——電気信号でのデータ伝送を光に置き換え、消費電力や発熱を抑える技術群だ。情報通信の第一線を歩んできた専門家5名による座談会(全4回)の第1回。テーマは「AIブームは情報通信産業をどう変えたのか」。今のAI熱狂は本物か、それともバブルなのか。現場感覚をもとに語り合った。

この記事のポイント

  • 今のAIは「ブームとバブルが重なっている」状態。ただ需要は電力と半導体の制約で供給が追いつかず、当面バブルは弾けにくい、というのが業界の見方。

  • AIエージェントの登場でトークン消費は桁違いに増加。デジタル中心の“次”に映像を扱うフィジカルAIが控え、需要はさらに伸びる。

  • 「光電融合」は光技術の勝利ではなく、通信業界が情報業界に取り込まれる“最終章”。いまはデータコム(情報)がテレコム(通信)を技術でも牽引している。

  • 省電力の切り札として、電気を光に置き換えチップ近傍まで引き込む動きが加速。エヌビディアが先導している。


<話し手プロフィール>

崎浦 潤(さきうら じゅん)

株式会社プライマールネット 代表取締役、元・華為技術(ファーウェイ)日本研究所 技術顧問

大学卒業後、富士通で通信機器の実装開発に長く従事。2005年にプライマールネットを設立し代表取締役に就任する一方、2012年から2018年まで華為技術日本研究所の技術顧問として5G基地局などの開発に携わった。専門は通信機器の実装設計・5G基地局技術。

吉本 健(よしもと たけし)

元・東芝デバイス&ストレージ株式会社 技術マーケティング統括部長

大学院修了後、1986年に東芝に入社。半導体・通信システムLSIの技術開発と技術マーケティングに長く従事し、欧州駐在も経験。専門は半導体・LSIの技術マーケティング。

山﨑 王義(やまさき きみよし)

工学博士/KMY技研代表、元NTT研究企画部門チーフプロデューサ

大学院で工学博士を取得後、1980年にNTTに入社。研究所で超高周波デバイス研究部長やNTTエレクトロニクスで事業部長を歴任。2008年に新日本無線へ移り、2017年の定年退職後は個人事業「KMY技研」を設立。専門は半導体電子・光デバイスやセンサなど。

堀 修(ほり おさむ)

工学博士/元・株式会社東芝 執行役員 首席技監

大学院で工学博士を取得後、1986年に東芝に入社。研究開発センターでマルチメディア・AI領域の研究企画・技術管理を統括し、研究開発センター所長や執行役員AI-CoEプロジェクトチームリーダーを歴任。専門は情報工学・AI研究開発マネジメント。

岡野 広明(おかの ひろあき)

株式会社アーク・イノベーション 執行役員、元・ヒロセ電機株式会社 取締役

大学院修了後、1982年に日立電線(現・プロテリアル)に入社し、光ファイバなどの研究開発に従事。2003年にヒロセ電機で同社初の光デバイス事業を立ち上げ、取締役として自動車事業も統括。2020年からはアーク・イノベーションで新規事業やM&Aを支援。専門は光デバイスと事業戦略。


インタビュアー: 生成AIブームが通信インフラに与えた衝撃から整理したいと思います。推論需要が爆発して、データセンターの電力と帯域が限界に近づいています。AIブームが通信インフラに与えた最大の変化は何でしょうか。

崎浦: 今のAIがブームなのは確かなんです。ただ、ほかと違うのは、AIブームとAIバブルが重なっちゃっているんですね。AIバブルが弾けたときにどうなるのか、私もずっと気になっています。本当に弾けてズドンと落ちるのか、もしくは若干調整局面に入るだけなのか。今のところ予測がつきません。

インタビュアー: つまり、AIデータセンターの投資がずっと続くかどうか、というところですね。

崎浦: ハイプサイクルで見ていくと、通信の5Gはもう2022年ぐらいでズドンと失望期に入ってしまったんですね。AIの方は、今まさに過剰な期待を背負って登っていっている状態。それがピークになったときに、いつなのか、どこまで落ちるのか、というのは興味を持って見ています。

インタビュアー: ネットワークに限って言うと、AI前提でもう再設計されるようになりつつありますよね。

崎浦: 光電融合というのは、光の技術とコンピュータの技術が融合するんじゃなくて、実は情報業界と通信業界のせめぎ合いの最終章なんです。通信の業界が情報業界に取り込まれる最後のイベントが光電融合だ、と私は捉えています。その後、情報業界が生き残るかというと、業界としてはコモディティ化してしまって、情報業界も残らない、通信も残らない。そういう状態になっていくだろうと思っています。

インタビュアー: それはどういう意味ですか。

崎浦: ベースを考えると、通信業界って欧州の技術なんですよ。ITUとか、CCITTからITUのベースになってきた欧州の技術。それに対して、情報はアメリカの技術なんです、IEEEをベースにして。それが完全にぶつかっていたんですね、今まで。ところが、通信の業界はすごく小さい。多勢に無勢で、やっぱり情報業界に取り込まれるしかなかった。その最終章に来たな、というのが今の状態だと捉えています。

インタビュアー: 吉本さん、欧州の通信に長く関わってこられた立場ではどうですか。

吉本: インフラの規模に比べると、プレイヤーはすごく少ないですよね。インターネットを使い始めたとき、「なんか遅いな」とストレスを感じていた時代があって、だんだんネットが速くなってきて、ストレスなく動けるようになったと思ったら、今度はAIに聞いてもすぐ返ってこない。これは二つあって、AIのデータセンターでの処理がものすごい時間がかかっているという事実と、情報量もものすごく増えているということがあるから、トラフィックとデータセンターの処理の両方が全然足りなくなっている。

人間って、一旦便利になったものは絶対後戻りできない、そのストレスを許さない。だからどんどん需要が伸びるというトレンドが——過去の通信もそうですし、3Gになって速くなったと思った途端、また遅くなったような感じがして、4Gになりました、LTEになったら今度はまた足りなくなって5Gになりました、という繰り返しになっている。事業的な側面はともかく、その欲望はずっと続くので、消えることはない。事業的なバブルとかブームはあると思うんですけど、人間の本性から言ったら伸び続けるままです。情報が増えれば増えるほど、またどんどん欲しくなる。だからバブルは、実は弾けないんじゃないかと(笑)。僕はそう思ったりするんですね。

インタビュアー: 山崎さんはどうですか。

山崎: 私は2000年頃の光通信バブルを経験したんですけれど、それは大変でしたよね。過剰投資するんですね。特に、AIの世界は一人勝ちの世界ですから、何社かがそれぞれ勝とう思って競って投資する。いずれ淘汰されます。AIが技術として残るのは間違いない。何社かは生き残るが、何社かは残念ながら大きな負債を抱えて、潰れざるを得ない。それはバブルの崩壊といえば崩壊ですし、AIそのものは、インターネットがずっと続いているように、続いていくんだと思います。事業をやっている人は気をつけて、という感じですね。

インタビュアー: AIはバブルだ、ということですよね。

山崎: AIそのものは続くんですよ。インターネットも続きましたからね。使って便利なものは続くんです。ただ、それで勝とうと思っている人がワーッといるわけですから、全員が勝てない。すると、何社かは大きな負債を抱えるわけですよ。これだけ投資していれば。

インタビュアー: さっき崎浦さんがおっしゃった、通信と情報のせめぎ合いは、どうなっちゃうのかなと。

山崎: データコムとテレコムというのは昔からずっとせめぎ合いをしていて、だいたいテレコムの方が技術は先行してきました。高速化や波長多重でも、テレコムの方が引っ張ってきました。ただ今は、投資規模からいうとデータコムの方が圧倒的に多くて、研究者も集中していますから、データコムの方が技術も引っ張っている。データコムでできたものをテレコムも使っている。安いですからね、圧倒的に。この上り調子と下り調子といいますか(笑)、こんな感じでこのところ続いています。

インタビュアー: そこは変わらないと。

山崎: 変わらないと思います。市場規模からするとどうしようもないですよね。

崎浦: NTTがIOWNっていうのをやっていますけど、あれはもう断末魔というのか、「光だけは通信の技術だよ」ということを言いたいがゆえに、NTTが提唱しているんじゃないかなと思っています。

山崎: IOWNもデータコムを対象にしています。データセンターの中に光電融合を入れて、メモリだとかGPUだとかをシェアしながら全体を最適化しましょう、と。電気でやるより光の方がいいでしょう、ということで、むしろ今はデータコムを狙って、ブロードコムだとかと組んでやっている。もうみんなそっちを向いていますよ。これは間違いない。

インタビュアー: 堀さんの目から見てどうですか。

堀: 私も3カ月前まではAIバブルかなと思っていたんですけど、AIエージェントが出てきて、去年の11月にAnthropicがOpus 4.5を出したあたりから、AIエージェントという考え方が出てきて、人間の代わりに仕事ができることが分かってきて、そこからここ6カ月でものすごい勢いで伸びました。今までのチャットだと、トークン(吐き出すテキストの量)はこの程度、という感覚でしたが、エージェントは中でグルグル自分自身で作り出すので、100倍から1000倍くらい使ったりする。今、ものすごい勢いでトークンを消費している状況が生まれていて、新しいモデルを出すたびにトークン数が増え、使うユーザーもB to Bでものすごく増えている。これはアメリカと中国でものすごい伸びをしているんですけど、日本はその肌感覚が全くなく、明らかに遅れています。

バブルというのは、供給が需要を上回って需要が低くなった瞬間に潰れるんですけど、今は需要がものすごく伸びている一方、供給を支えているデータセンターは、各社が自分だけが王者になるがごとく投資しているが、供給過剰になっていない。データセンターそのものが何に律速しているかというと、電力と半導体なんですよ。これが足りていないので、供給過剰にはならない。需要が伸びる一方、供給は全く追いついていないので、バブルが弾けないということです。

AIモデルだけを稼ぎ頭にしているところはどこか潰れることはあるかもしれないけれど、AIデータセンター事業そのものは万全だと思っています。半導体と電力によって供給が間に合っていない状態なので、バブルは潰れないと、最近は業界的に言われています。デジタルの世界だけが進んでいる今の次に来るのがフィジカルAIという領域で、画像や映像が入ってくるので、ものすごくトークンを食う。ここ5年から10年は需要が増え続けるというのが業界的な見方です。

光の話がどういう文脈で見えるかというと、電力が足りないので、できるだけ省エネしたいという中に光でやりたいという話が出てきた。IOWNはその前からあったので、たまたま光という文脈にぴったり合っている、というのが今の状況だと思います。エンド・トゥ・エンドで、ユーザーとAIデータセンターをできるだけ電気にしないで光でつなぐ部分が非常に重要で、電力を送電すると5%くらい熱になってしまうので、電力のあるところにデータセンターを置いて、データを運んだ方が消費電力を抑えられる。それからGPUの周りがすごく熱を持っていて、チップと光の接点のところで、できるだけ光でチップまで引き込んでいくことをやろうとしていて、実はエヌビディアがここをすごく頑張っています。

(このあと話は、光電融合が実際にどこまで実用化されるのかという核心へ移っていく。第2回に続く

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