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座談会

2026/7/29

【AIと情報通信|第2回/全4回】 光電融合はゲームチェンジャーか──日本の勝ち筋は「材料」にある

座談会

前回、AIブームが通信インフラを逼迫させている実態と、その解決策として「光電融合」が急浮上している背景を語ってもらった。第2回は、この光電融合がどこまで実用化フェーズに入っているのか、そして日本の材料産業に残された勝ち筋はどこにあるのかを掘り下げる。

この記事のポイント

  • CPO(Co-Packaged Optics)でエヌビディアが号砲。光化はスケールアウトからスケールアップ、ラック間へと現実に進みつつある(チップ内や“光で計算”はまだ先)。

  • 光電融合の主戦場はもはやLSIの世界。日本が得意としてきた領域だが、海外の桁違いの投資で激戦区になっている。

  • 日本の勝ち筋は「材料」。ノウハウの塊で真似されにくく開発は10年単位。半導体パッケージ材料などで日本勢が高いシェアを持つ。

  • 課題は投資構造。デバイス部門が大企業の一部門にすぎず、単独で大胆な投資ができない。“勝っているうちに束ねる”判断が日本は苦手。


インタビュアー: 光電融合がゲームチェンジャーになるか、というところです。山崎さん、光の世界は「光、光」と言われては期待外れに終わることを繰り返してきたと思うのですが、今回はCPO(Co-Packaged Optics)をめぐって、エヌビディアがスケールアウトの領域で最優先と言い、一気に流れが変わったように見えます。本格導入のフェーズに入ったと見ていいでしょうか。

山崎: その通りだと思いますよ。いよいよ光かな、と。まあ20年に1回は山が来ますからね(笑)。ただ、どこまで光が入るのか。スケールアウトは入ったけれども、スケールアップまで行くのか、さらにパッケージ内やチップ内まで行くのか、というところはいろいろ議論があるところだと思います。スケールアップまでは光化されると思います。ラック間といった目に見えるところはどんどん光になっていくのでしょう。消費電力の関係で、電気は距離が長くなるとどうしても耐えられない。それがだんだん近距離の領域に来たのかな、という気がしていますね。

インタビュアー: 崎浦さん、どうですか。

崎浦: まったくおっしゃる通りで(笑)。最近シリコンフォトニクスっていう名前を聞かなくなったような気がするんですね。CPOばっかりで。なんとなくトーンダウンしているような気がするんです、シリコンフォトニクスの方が。

山崎: まあ、でも同じものですからね。

崎浦: というか、わざわざ言わなくても、もう生まれちゃう(含まれちゃう)ということですかね。

吉本: 交じっている、と言いますか、いわゆるLSIの世界なんですよね、光というよりは。ただ単に、そこの部分を電気じゃなく光を使っているだけの話で、もう業界も光業界というか、LSI業界ですからね。

崎浦: なるほど。データコムとテレコムの話がありましたけど、光電融合で光が表に出てきたというよりは、なんか逆に、LSIの最終章じゃないか、というような話で来ているのかな、という気がしますね。

吉本: もちろん。とにかく銅線を使わずに熱を出さないか、という全体論としてはありますよね。データセンターなんかも、本当にもう銅だらけになっていて、それを何とかしないとどうするの、というのが一つのクリティカルポイントになっているじゃないですか。だからその上で、光でどこまでできるか、光化するというのが当然の成り行きなのかな、という気が。

インタビュアー: 堀さん、さっき途中まで言いかけていたことがあれば。

堀: できるだけ銅線で電気を出すところを光に変えていきたい、というところですよね。通信をできるだけチップの近くまで持ってこようというのがまず第一段階で、次はチップ間とか。チップ内というのは相当ハードルが高いという風に思っていますし、計算自体を光でやるというのも当分先だという気がしますが。まずは外から中のチップに引っ張るところ、それからチップ間というところが競争になると思うんですけれども。なんとなく、ここは日本が得意としていたところだとは思うんですけど、かなり海外も頑張り始めたので、相当激戦区になって、特にエヌビディアがものすごく頑張っているので、お金の掛け方が全然1桁くらい違うんで、ちょっと日本も……(笑)。先駆者だと言いつつも、すごく追いかけられているんじゃないかな、という気がしています。

インタビュアー: そうした技術の変化は、材料へのインパクトという意味でも大きいと思います。結局、日本で勝てる領域はそこだという見方もありますが、山崎さんはどうですか。

山崎: その通りだと思います。光部品という意味では、バブルが潰れたあと、日本ではほとんどなくなってしまっています。外部レーザーや光ファイバーは頑張っていますけど、かなり部分が海外に移っている。で、残っているのは材料ですね。材料って息が長いんです。開発にも時間がかかるし、一度入ると結構シェアも高く取れる。材料のところに日本の勝ち筋がある。今でも半導体パッケージの材料では味の素や三菱ガス化学といったところが非常に高いシェアを持っている。光電融合になっても、同じように、材料のところには勝ち筋がある。

インタビュアー: なぜ日本は材料が強いのでしょうか。中国のように特化した分野に一気にお金をかけて日本を抜き去るケースもある中で、何が違うのでしょう。

崎浦: 私、ファーウェイにいたから感じますけど、お金の掛け方が違うんですね。とにかく投資なんですよ。失敗しても投資なんです。1兆円、2兆円なんていう開発費をかけて開発をしますと。その中で、本当に製品になるのって5%くらいしかないんですよ。で、その5%はものすごく儲かるんです。そういう構造ができているので、それは日本では真似ができないですね。多分そこが、いろんな産業で日本が負けてきた理由だろうな、という風に思っているんですけど。ただ、部品のメーカーさんと材料のメーカーさんというのは、それでもシェアを持っているんですね。そこがちょっと、私も何でかな、というのはずっといつも考えています。

山崎: 材料って真似をすることが難しいのですよ。ちょっと気を付けることによって特性が変わったりする。特許を見ても全部書いてあるわけではなく、どれが本命かもわからない。ノウハウの塊なんですね。あと開発に10年単位で時間がかかる。意外に真似できないんです。

岡野: 投資の観点で申し上げると、日本の光関連デバイスメーカーやデバイス部門って、いずれも大手企業の一部門として位置づけられているのが実情ですよね。そのため、部門単独で意思決定できず、会社全体の経営方針に強く左右されてしまうんです。本体の業績が低迷すれば、光デバイス部門への投資も抑制されてしまう。本来であれば、自分たちで儲けたお金を使えばいいんだけど、そういう構造になっていないんですよね。だから非常にまずいんです。この点は、日本の産業構造として非常に課題が大きいと感じています。本来であれば、産業政策を担う機関がもっと積極的に主導して、光デバイス関連企業をある程度集約して、連携体制を構築するといった取り組みがあってもよかったはずなんです。でも、そうした動きが見られなかったんですよね。

吉本: いや、もうおっしゃる通り。半導体の衰退っていうのは思いっきりそういうところがあって。結局、投資の規模が、個々の企業の中の限られた領域にしか、本当に限られた投資しかできなかったというのは大きいんですよね。しかも、マスが限られている中で食い合いをしていた。もう本当に国策としてやっていれば全然違っただろうに、今さら投資しているじゃないですか。でも、それはもう完全に手遅れ。

岡野: かつて国内には、光デバイスや電子部品の分野で非常に優れた技術力を持つ企業が数多く存在していて、大手電機メーカーの中には、光コンポーネントを専門に扱う部門や、電子デバイスを長年手がけてきた部門があって、素材系の企業や総合電機メーカーもそれぞれ強みを持っていたんです。これらを一つに集約できていれば、国内の光デバイス産業は非常に大きな競争力を持ち得たはずなんですよね。でも実際には、企業ごと・部門ごとに分断されたまま来てしまって、十分な連携が生まれなかった。もし国内の技術を結集できていれば、海外の大手光デバイス企業に対しても、決して劣ることはなかったと思うんです。それが非常に、僕としては悔しいですよね。

崎浦: エルピーダだとか、ああいうのは結局、経産省が入ってきたり、国策でやったがゆえに……。

吉本: いや、結局だから投資の規模なんですよ。それが中途半端で、そういう風に行けなかったというのと、それから、どこの会社とは言わないですけど、国がお金を入れて作った半導体会社の資本の中に、ユーザーさんが投資をそのメーカーにしていて、そうすると健全な事業ができないんです。それが足を引っ張るようになっていたりするだろうな、と僕は思いますけどね。

崎浦: 今のラピダスって、どうですか。

吉本: 厳しい。

岡野: もう手遅れだから。私もそう思いますけど、そう見えるんですよ。ただ、東芝の例なんかあげると、切り離してよかったね、というのがある。逆に東芝からすると、あれ持っときゃよかったのに、って話になる(笑)。経営者のジャッジミスですよ、正直言ったら。

吉本: 半導体の事業と、重工業の事業とは、ライフサイクルが全然違うので。毎年投資を続けて走り続けてやらないと勝てない事業なんだけど、それと、重工業のずっと永遠に続く事業と同じ中に入れてしまうと難しい。

崎浦: いや、私、日本人ってこの判断(撤退・売却)が下手なんだと思いますよ。耐えられないんですよね。

堀: 中国は国が入れているし、アメリカはエンジェル、というか民間が入れていますよね。だから、そこら辺の規模感が大きいんだ、という風に思いますね。

吉本: 今回のベンチャー投資にしても、集まっている額がもう1桁2桁違いますよね。

堀: 大金持ちが多いんですね、アメリカはね。貧富の差も大きいんですけど。

岡野: 今、特に心配しているのが、フィジカルAI領域の動向なんですよ。この分野では、中国が圧倒的に先行していて、国家戦略として大規模な投資を進めています。手術支援ロボットなんかにも、ものすごく多額の資金が投入されているんです。ロボティクス関連のベンチャー企業に対しても、投資基準がかなり緩和されているんですよね。赤字であっても成長性があれば積極的に投資する、という方針が明確で、医療ロボット産業を国家政策として育成しようとしている。こうした海外の取り組みと比べると、日本の投資規模や支援のあり方は、どうしても中途半端に見えてしまうんです。ロボット分野なんてその典型で、技術力は高いのに、資金投入や産業育成のスピードが十分とは言えないんじゃないか、と思いますね。

山崎: 半導体の例で言うと、日本は、勝っているときには一緒になれないんですね。負け出すと「一緒になろうな」という(笑)。弱い者同士が一緒になっても勝てない。勝っているときに高く事業を売ろうという気が、あまりないですよ。高いときに売れば儲かるのにね。その辺りが下手なのか。

崎浦: 投資の話もそうですけど、なんとなく日本人の古くからのメンタリティというのか、習慣というのか、もしくは国民性かもしれません。地道にやるのは強いんでしょうけどね。人にお金をかけないですもん、日本って。海外なんかは、本当に「この技術が欲しい」と言ったら一本釣りで、年収2000万とかで一本釣りしていきます。まあ、その代わり2年経ったらお払い箱になりますけど。そういう働き方ができない、というか、制度的に認められていないし。もう少しそういう方向に持っていかないと難しいですよね、日本の企業が。

インタビュアー: 材料は今後、日本は衰退していくのでしょうか。

崎浦: ちょっとあるのは、やっぱり海外の企業って労働の流動性が高いんですね。だから1年、2年でお払い箱になってしまう。材料って、もっと息の長い、足の長い研究が必要なので、それで日本に残っているんじゃないかな、というのが私の仮説です。

吉本: だから、崎浦さんが言われたように、AIで設計できるようになると思うんですよ。今までのやり方で本当に試行錯誤を、10年かけてやるというやり方が本当にいいのか。あるいは、材料を実際に市場に出すわけですから、それは分析すればもう分かっちゃう、簡単に作れますんで。そういう時代になってくると、追いつかれる。だから、勝っている間に合従連衡した方が、私はずっといいと思いますね。多分、それをしないんですよ。先行投資というのは多分できない。今の日本のやり方では、すごいリスクを取ってでも買っていくというダイナミックなことができない。

崎浦: そこで一つあるのは、村田さんとか材料・部品メーカーさんって、同族企業なんですね。株式公開はしているんですけど、オーナーがいる、というところがやっぱり強いですね。自分のお金で投資します、ということですよね。その代わり、石にかじりついてもやる、という考え方。

インタビュアー: 堀さん、何かありますか。

堀: もうしょうがないのかな、という感じがしていますね。そういう話を少し政府の人ともやったんですけど、日本はもう老人国なので、やはり社会保障に金をかけなきゃいけないので、そこ(先端技術)にお金は行きません、と正直に言っていましたから。民間がもっと頑張ればいいんですけど、昔は民間も結構元気だったんですけど、今は民間が金をかけられなくなっちゃったんじゃないですかね。競争が激しくてね。大企業ってすごく自由な研究をやっていたと思いますけど、今はものすごく説明を求められて、「儲かるのか、いつ回収するんだ」ということを、誰でも言えることを上の人が言って、もう何にもできない、という感じがしていますね、今の大企業も。お金をいっぱい持っているトヨタさんがもうちょっと頑張っていただくといいんじゃないかと思いますけど。

国居: だから結局、日本はやっぱり自動車産業なので、もうトヨタ一強ですよね。それもいいのかどうか、というのはあると思いますよ。やっぱり、これから伸びる産業としては、マテリアル(材料)産業だと思うので、日本はね。そこはやっぱり強くなって、さらに強くなって、各分野にその材料が活かされていく。そこの戦い、競争力を持たせてどうやっていくか、という国の戦略がすごく必要だろうな、と思いますよ。

(材料の話は、次のテーマ「5Gはなぜ失敗したのか」にもつながっていく。第3回に続く

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