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技術の潮流を読む

2026/6/18

酵素設計AIの主要企業と日本の現在地_国内スタートアップ4社と米中の国家戦略 #027

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酵素設計AIの開発競争は、米国・中国・欧州・日本がそれぞれ異なる戦略で火花を散らす地政学の様相を呈している。日本はこの分野で「遅れている」と評される一方、独自の強みを持つスタートアップが育ちつつある。本記事では、国内4社の差別化戦略と各国の国家戦略から、日本の現在地を読み解く。

目次

1. 酵素設計AIとは|世界で激化するバイオものづくり競争

酵素設計AIとは、デジタル配列データをもとに、AIで酵素の機能を予測・設計する技術である。狙った物質を微生物や酵素で効率よく作る「バイオものづくり」の心臓部であり、医薬品・化学品・食品・環境分野の競争力を左右する。

この領域はいま、国家戦略のレベルで世界の主要国がしのぎを削る舞台になっている。米国は2025年に「Winning the AI Race(米国のAIアクションプラン)」を打ち出し、タンパク質構造にも言及。中国は第14次5か年計画で合成生物学を重点分野に据えた。日本も2025年11月、成長戦略の17の重点投資分野に合成生物学・バイオを新設している。各国の戦略を比べると、勝ち筋がそれぞれ違うのが見えてくる。

2. 米国・中国・欧州|国家戦略で見る3つの異なる勝ち筋

米国は「物量とトップ人材」で押す。NIHやDOE、NSFが潤沢な資金を供給し、候補を500〜1,000個作って試す物量主義が特徴だ。Codexis、David Bakerが共同設立したArzeda、細胞プログラミングのGinkgo Bioworks、ProGenを擁するProfluentなど、有力企業がひしめく。ただし合成生物学への投資は浮き沈みが激しく、現在は落ち込み局面にある。

中国は「国家主導の網羅戦」だ。合成生物学の重点プロジェクトに2024〜2025年で総額約243億円を投じ、BioMap(百図生科)が世界最大級の生命科学基盤モデルを開発。論文数でも2025年に急伸し、米国と肩を並べる勢いを見せる。既存酵素を改良する「ものづくり」志向が強い。

欧州は「効率主義」。資金規模は大きくないが、製薬大手のGSKやNovartisが大学発スタートアップと組み、原薬の酵素プロセスを着実に実装する。スペインのZYMVOLは実験を最大90%削減すると謳う。「20個で済ます」洗練された開発文化が根付いている。

3. 日本の現在地|「遅れ」と評される構造的な理由

では日本はどうか。バイオエコノミー戦略のもと総額1兆円規模の予算が措置され、NEDO「バイオものづくり革命推進事業」や文科省のGteX基金(496億円)など、支援の枠組みは整いつつある。

それでも専門家の評価は厳しい。この分野で「遅れている」というのだ。理由は構造的だ。デジタル配列データを使ったin silico(計算機上)の活用が活発でなく、そもそも酵素設計を手がける企業の数が少ない。実験(wet)と情報科学(dry)の両方を扱える人材も不足している。加えて、海外の動向に連動しやすい弱さもある。米Zymergenの主要顧客が三菱ケミカルや住友化学だったように、日本企業は海外プレイヤーの浮き沈みの影響を受けやすい立場にある。

豊富な予算という追い風はある。だが、それを使いこなす企業と人材の層の薄さが、日本の現在地を規定している。

4. 国内スタートアップ4社の差別化戦略

それでも、独自の強みを磨く国内スタートアップが育っている。

早稲田大学発のbitBiomeは、1細胞単位で微生物を解析する独自技術と約20億遺伝子のデータベースを武器に、未知の酵素を掘り当てる。味の素やキリンを顧客に持ち、PET分解酵素にも取り組む。東京科学大学発のdigzymeは、食品分野に特化したアプローチで、フジ日本精糖や松谷化学と組む。

東北大学発のレボルカは、少ない教師データで高い的中率を出すAI技術「aiProtein®」を持ち、第一三共や住友製薬を顧客とする。神戸大学発のバッカス・バイオイノベーションは、DBTLサイクルを回すバイオファウンドリ機能で勝負する。

シングルセル解析、食品特化、少データ高精度、ファウンドリ——それぞれが大手に真似されにくい独自の切り口を持っている点が共通している。

5. まとめ|日本が主導権を握るための条件

酵素設計AIをめぐる競争は、米国の物量、中国の国家主導、欧州の効率主義と、勝ち筋が分かれている。日本は予算という追い風を得ながらも、企業と人材の層の薄さという課題を抱える。

だが、独自技術を磨く国内スタートアップは確実に育っている。彼らの強みと大手の生産基盤、そして1兆円規模の予算をどう噛み合わせるか。wet/dry人材の育成と、産官学でのデータ標準化を日本主導で進められるか。そこに、周回遅れを逆転する条件がある。自社のバイオものづくりに、どの国内プレイヤーとどう組むかを考える価値は十分にある。


本コラムは、これまでIBLCが蓄積してきた技術・市場に関する情報をもとに、IBLC専門家チームが独自の視点で整理・考察したものです。

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IBLCでは、米国・中国・欧州・日本の合成生物学に関する国家戦略・予算動向の比較分析、国内スタートアップ4社(bitBiome・digzyme・レボルカ等)の差別化戦略と協業可能性調査、wet/dry人材やデータ標準化を含む自社バイオものづくり体制の構築支援を専門家チームがサポートします。

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