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再生プラスチックをめぐる規制は、「使い捨てを禁じる」段階から「再生材を使わせる」段階へ移った。EUは包装に続き、新車にも再生プラ25%を求める方向で合意した。本記事では、素材・部品メーカーの技術企画担当者に向けて、EU・米国・中国・東南アジアの規制と課税の現在地を比較し、地域ごとの温度差を読み解く。
目次
再生プラスチック規制は、世界で3つの段階を踏んで進んできた。
第1段階は、レジ袋やストローなど使い捨てプラスチックの禁止だ。EUの指令をきっかけに世界へ広がった。
第2段階は、廃プラの越境移動の制限である。中国が2017年に廃プラの輸入禁止を打ち出し、2018年から施行した。これを機に、東南アジア各国も輸入を制限し、先進国は廃プラを自国で処理せざるを得なくなった。
そして第3段階が現在の「再生材の使用義務」だ。製品に一定割合の再生材を含めるよう求めるもので、需要側から再生プラの市場をつくろうとする発想に立つ。
一方、国際的なルールづくりは難航している。プラスチック汚染を防ぐ国際条約の交渉は、2025年8月にジュネーブで開かれた会合でも合意に至らなかった。統一ルールがない分、各地域の規制の違いを個別に押さえる必要がある。
再生材の使用義務で世界の先頭を走るのはEUだ。2026年8月に適用が始まった包装・包装廃棄物規則(PPWR)で、プラスチック包装に2030年から再生材の最低含有率を課した。
次の対象は自動車である。2023年7月に欧州委員会が提案した使用済み自動車(ELV)規則について、2025年12月に欧州議会とEU理事会が暫定合意した。合意内容では、新車に使うプラスチックの再生材比率を、規則の発効から6年後に15%、10年後に25%とする。さらに、その目標の20%は使用済み自動車から回収したプラスチックでまかなう必要がある。
この「車から車へ」の条件が難しい。自動車部品はPPを中心に多様な樹脂が使われ、塗装や複合化も多いため、高品質な再生材を安定して得にくい。
欧州に完成車や部品を輸出する日本企業にとっても人ごとではない。自動車用の再生PPを開発する動きは、国内外の素材・部品メーカーですでに始まっている。
米国のプラスチックリサイクル率は1割に満たず、廃プラの約4分の3が埋め立てられている(米環境保護庁、2018年データ)。環境保護庁は2021年に「2030年までにリサイクル率50%」を掲げる国家リサイクル戦略を公表した。しかし、連邦レベルの法規制には結びついていない。
規制を主導しているのは州だ。包装の回収・処理費用を製造事業者に負担させるEPR(拡大生産者責任)法は、メイン、オレゴン、コロラド、カリフォルニア、ミネソタ、メリーランド、ワシントンの7州で成立した。オレゴン州では2025年7月に制度が始まっている。
最も厳しいのは、2022年に成立したカリフォルニア州のSB54だ。対象となる包装のリサイクル率を2028年に30%、2032年に65%へ引き上げ、同じ2032年までにプラスチック包装を25%削減する。施行規則は2026年1月に一度撤回され、同年5月に承認された。
民間の動きも活発だ。Dowは2030年までに年300万トンの循環型ソリューションを事業化する目標を掲げ、廃プラの化学リサイクルに投資している。
中国は2021年の「第14次5カ年計画・循環型経済発展計画」で、プラスチック汚染対策を重点行動の一つに位置付けた。ただし、再生材の使用を義務付ける具体的な数値目標までは示していない。現状は廃プラの削減と、回収・分別の仕組みづくりが中心だ。
東南アジアでは、回収インフラの不足がさらに深刻である。インドネシアの官民連携組織NPAPの2020年の報告によると、同国では年間約680万トンの廃プラが発生し、その48%が野焼きされていた。タイは2027年までに対象プラスチックを100%リサイクルするロードマップを掲げている。しかし、法的な拘束力はない。
廃プラを燃料として焼却する方向に投資が向かいやすいことも、リサイクルが進まない一因だ。
言い換えれば、アジアの課題は再生材を「使わせる」ことより前の、良質な廃プラを「集める」段階にある。回収・選別の技術や、選別しやすい素材設計へのニーズは、むしろこの地域で大きい。
規制と並ぶもう一つの手段が課税だ。EUは2021年から、リサイクルされないプラスチック包装廃棄物1kgあたり0.8ユーロを、加盟国がEU予算に拠出する仕組みを導入している。スペインのように、2023年から使い捨てプラスチック包装に1kgあたり0.45ユーロの独自課税を始めた国もある。
英国は2022年4月にプラスチック包装税を導入した。再生材の含有率が30%未満のプラスチック包装が課税対象となり、税率は2026年4月から1トンあたり228.82ポンドに上がった。年10トン以上のプラスチック包装を製造・輸入する企業に納税義務がある。
課税の狙いは、再生材とバージン材の価格差を縮めることにある。バージン材を使うほど税負担が増えるなら、再生材を選ぶ経済的な理由が生まれる。規制で需要をつくり、課税で価格を支える。EUと英国はこの2つを組み合わせて市場を動かしている。
再生プラスチック規制は、地域によって段階が大きく異なる。EUは包装と自動車で再生材の使用を義務化し、課税も組み合わせて需要と価格の両面から市場をつくっている。米国は州法がEUに近い水準を目指す一方、連邦は動いていない。中国と東南アジアは、回収インフラの整備がまだこれからだ。
この温度差は、そのまま技術需要の地図と読み替えられる。EUでは再生材を混ぜても性能を保つ材料技術、米国では州ごとの制度に対応するサプライチェーン設計、アジアでは回収・選別の技術が求められる。
プラスチック資源循環は世界共通の課題だが、どこで何が求められているかを見極めることが、事業の打ち手を決める。
本コラムは、これまでIBLCが蓄積してきた技術・市場に関する情報をもとに、IBLC専門家チームが独自の視点で整理・考察したものです。
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