NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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粉体プロセス科学に立脚した軸受用ナノ粒子分散Si3N4セラミックスの応用研究

ナノセラミックスのための粉体プロセス科学がイノベーションをもたらします。
軸受の高性能化に不可欠なナノ粒子分散Si3N4セラミックスの実用化を加速させる応用研究。この実用化に必須である「低コスト化と高信頼性化の両立」のための課題を、粉体プロセス科学の高度化に基づいて解決を図る。開発される材料は、グリーンイノベーション社会システムの普及促進、安全・安心イノベーションにも大きく貢献できます。

研究機関・所属 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 環境情報学府
氏名・職名 多々見 純一 准教授
研究テーマ名 粉体プロセス科学に立脚した軸受用ナノ粒子分散Si3N4セラミックスの応用研究
応用想定分野 自動車用ターボチャージャ、風力発電などの回転要素への適用によるグリーンイノベーションへの貢献
技術紹介

 セラミック軸受の高性能化に不可欠なナノ粒子分散Si3N4の実用化を加速させる応用研究です。実用化には低コスト化と高信頼性化の両立が必須です。そこでは粉体プロセス科学の高度化がブレークスルーポイントと確信し、具体的には、ナノ原料粉体の均一分散、安価な原料粉の使いこなし、低欠陥均質成形体の製法、原料粉末特性と焼結収縮挙動と微構造の制御等を研究展開しています。また、これまでブラックボックスとして扱われてきたセラミックス作製のノウハウの中に潜む原理を科学的に解明し、さらにセラミックスの破面のナノフラクトグラフィー(ナノ~原子スケールの観察)を行うことにより、破壊靭性の発現メカニズムや疲労、摩耗メカニズム等を明らかにし、セラミックスの高信頼性化を図っています。

第6回フルラス記念先端セラミックスシンポジウム(資料): 2011年10月12日

<興味ある研究成果事例>

Si3N4-TiNにおいて、TiNのナノ粒子分散は磨耗と強度の両立が実現する。TiNの熱膨張係数αはSi3N4のそれよりも大きく、粒界へのナノTiN粒子分散により粒界に圧縮応力を作用し、疲労強度の改善にも極めて効果的であることも判ってきました。
今後は、潤滑要素が期待されるBN、珪化Moなどのナノ粒子分散にも関心があります。
CNT-Si3N4系のナノ構造制御による導電性と耐摩耗性の共生:
Si3N4セラミックスはベアリングとして軸受鋼(SUJ2)では適用できない分野に広く利用されています。しかし、現用の材料は絶縁体であることから、各種応用機器の作動中に静電気が発生することが問題となっています。カーボンナノチューブCNT の均一分散技術と焼結技術に特化し、Si3N4 セラミックスの粒界に CNTを分散させて微量で導電性を付与させ、導電性と高耐摩耗性を共生させたSi3N4 セラミックスを開発しました。
ナノ粉体混合プロセスには、メカノケミカルが大きく期待できます。AlNとY2O3のメカノケミカルでAlN/Y2O3の強度向上、あるいは、CNT-TiO2によるメカノケミカルにより導電性が大幅に改善、電池電極への適用が期待されます。
「Si3N4基板」は高熱伝導性と高強度、疲労特性を両立する展望が開け、AlN基板に替る可能性が高まっています。

<拠点連携先> 神奈川県産業技術センター

技術の特徴
ナノ粉体プロセス科学とナノフラクトグラフィー・トライボロジーなどのナノ解析とを組み合わせた統合的なナノアプローチにより、新しいナノセラミックスの時代が開けそうであること。
この研究過程で、STRUCTURALとFUNCTIONALの融合が飛び出しそうであること。例えば、導電性と高強度、疲労特性を両立するSi3N4などが期待されます。
多々見純一准教授は大変に闊達で、産学連携も多様な実績があり、大学の研究には珍しく、実用化の大きな障壁となるノウハウ面及びコスト面の研究開発も並行させるというアプローチは注目に値します。
米国セラミックス学会からの受賞などを契機として、欧米でも注目、認められています。
特許出願状況

耐摩耗性・強度・疲労。粉末関連特許
 特開2001-026407(αサイアロン粒子)
 特開2004-002067(耐摩耗性窒化けい素焼結体)Si3N4-TiN-Si/R/Al/O/N系
 特開2007-297231(導電性耐摩耗性窒化けい素焼結体)CNT-SiC-TiN系
 特開2011-051856(直接窒化法による高純度窒化ケイ素微粉末)
 特開2011-057488(接合強度に優れた窒化アルミニウムセラミックス接合体)
 特開2011-195395(相対密度の高い窒化ケイ素系セラミックス)

導電性セラミックス関係特許も多数あり。

研究者からのメッセージ
ナノアプローチによりセラミックスの新しい時代が起こせそうである、広めたい。そこでの挑戦は、「低コスト化と高信頼性化の両立」のために、粉体プロセス科学の高度化に基づいて解決を図ることに関心がある企業と連携したい。
なお、耐摩耗性Si3N4系セラミックス軸受に限らず、セラミックスに関心のあるあらゆる企業であっても良い。
ナノ粉体の均一混合に続いての課題は、均一成形、成形欠陥の測定・評価である。 100~200μmの表面欠陥の非破壊検査が重要な位置づけとなろう。 現状のCTやX線顕微鏡では限界。新しい非破壊検査の共同開発も期待したい。
また、これからはセラミックスのSTRUCTURALとFUNCTIONALの融合に着目したい。新しい着眼の研究成果出口の狙い目である。

参考:

横浜国立大学 多々見純一准教授紹介
http://www.eng.ynu.ac.jp/staff/00000070/index.html
「粒子複合化プロセスによるナノ粒子分散型窒化ケイ素セラミックスの開発」
http://www.hosokawalab.jp/micromeritics/no_51/pdf/No51_08.pdf
「TiN 粒子分散Si3N4 セラミックス-軸受系の摩耗挙動」
http://www.kanagawa-iri.go.jp/kitri/kouhou/program/H16/2306.pdf

最近の学術研究受賞:

2011年10月 Richard. M. Fulrath賞(米国セラミック学会)
「セラミックスの高信頼性化に関する研究」の業績
2011年01月 Global Star Award(米国セラミック学会エンジニアリングセラミックス部会)
「機械的手法による窒化物セラミックスの微構造制御と高機能化」
2009年4月 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞

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