微生物用マイクロデバイスを利用した、電気エネルギーの回収と
余剰汚泥の低減による水処理施設の省エネルギー化
窒素除去と発電活性を評価可能なチップデバイスを開発し、微生物およびシグナル分子の探索を行い、高い処理能力を有する微生物複合系を設計することで、対象に応じた水処理プロセスの最適化を行い、エネルギーの回収、汚泥発生量の削減を図り、水処理プロセスの省エネルギー化を達成します。
研究機関・所属 | 筑波大学大学院 数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻 |
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氏名・職名 | 福田 淳二 講師 |
研究テーマ名 | 微生物用マイクロデバイスの開発と水処理施設の省エネルギー化 |
応用想定分野 | 水浄化施設 |
技術紹介
水処理施設は、微生物の機能を活用し運転している現代社会に不可欠な施設です。国内だけでも1500を超える処理施設が現在稼働しています。水処理施設では、一般排水や工場排水に含まれる有機物を、活性汚泥中の複数種の微生物複合体(バイオフィルム)に酸化分解させて浄化する、微生物の機能を上手く活用した技術です。しかし、この処理に必要な曝気・エアレーション、ポンプなどの運転、さらに余剰汚泥の処理、埋め立てなどに多くの化石エネルギーが消費されているのも事実です。そのため、省エネルギー・低環境負荷の水処理プロセスを目指し、効率的な制御技術が模索されていますが、ほとんどが現場の経験に基づいているのが現状です。
我々は、微小センサを搭載したチップ上で、ナノリットルオーダーの溶液を操作する独自技術を持っています。これを使って、水処理における硝化活性を指標とし、新たな高機能バイオフィルムを設計します。さらに、有機物の分解過程で取りだされたエネルギーが微生物の増殖に使われ大量の余剰汚泥が生じている事実に基づき、この増殖に利用されるエネルギーを効率的に電気エネルギーとして取り出すシステムを開発します。
【図の説明】 アンモニアセンサ搭載チップ(a)上面図、(b)断面図
技術の特徴
- (1)
- 従来のマイクロ流路中での溶液操作は、連続流体が一般的でしたが、我々はプラグ型(流路内に液滴を閉じ込める方法)で溶液操作することで、必要最低限量の溶液操作を実現しました。これによりナノリットルオーダーで、希釈系列の作製、分析操作などが可能です。
- (2)
- 硝化活性向上に効果のあるシグナル物質を用いて、チップデバイス上でその効果を評価可能であることをすでに見出しています。このデバイスを使って、さらに有望なシグナル物質をスクリーニングすることができます。
- (3)
- 発電活性を評価できるマイクロデバイスも開発しており、発電活性(余剰汚泥の低減)を指標に試験を行うことも可能です。
従来技術との比較
特許出願状況
PCT/JP2008/ 63667(電気化学センサ)
出願予定(発電評価チップデバイス)
研究者からのメッセージ
微生物の機能を人為的にコントロールできる手段をいくつか持つことで、無駄を低減した省エネルギープロセスを実現できると考えています。低分子物質の添加によって、これまでの水処理施設の運転方法を革新できたらと思っています。柔軟に対応致しますので、水処理の現場でニーズをお持ちの方は是非お声掛けください。
参考:
http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~szk_fkd_lab/index.html
発表論文:
- 1.
- K. Toda, Y. Yawata, E. Setoyama, J. Fukuda, N. Nomura, and H. Suzuki, Continuous monitoring of ammonia removal activity and observation of morphology of microbial complexes in a microdevice, Applied and Environmental Microbiology, 77(12), pp. 4253-5 (2011)
- 2.
- Y. Yawata, K. Toda, E. Setoyama, J. Fukuda, H. Suzuki, and N. Nomura, Monitoring Biofilm Development in Microfluidic-device by Modified Confocal Reflection Microscopy, Journal of Bioscience and Bioengineering, 110, pp. 377-80 (2010)
- 3.
- Y. Yawata, K. Toda, E. Setoyama, J. Fukuda, H. Suzuki, H. Uchiyama and N. Nomura, Bacterial Growth Monitoring in a Microfludic Device by Confocal Reflection Microscopy, Journal of Bioscience and Bioengineering, 110, pp. 130-3 (2010)
- 4.
- .W. Satoh, S. Takahashi, F. Sassa, J. Fukuda, and H. Suzuki, On-chip Culturing of Hepatocytes and Monitoring their Ammonia Metabolism, Lab on a Chip, 9(1), pp. 35-7 (2009)