極低エネルギー化を実現する統合化システムLSI設計技術
LSIの自動設計ツールに従来の階層毎の設計の枠を越える革新的な考え方を提起します。動作レベルにおいて要素間の『強結合』および『弱結合』という概念を持ち込み、その上で動作レベル設計を行います。動作レベル(最上位レベル)と物理レベル(最下位レベル)とを同時に最適化することにより全体最適化が図られ、エネルギー消費を50%削減したLSIを設計することができます。
研究機関・所属 | 早稲田大学 大学院基幹理工学研究科 情報理工学専攻 |
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氏名・職名 | 戸川 望 教授 |
研究テーマ名 | 極低エネルギー化を実現する統合化システムLSI設計技術 |
応用想定分野 | LSI設計ツール |
技術紹介
従来のLSI設計は動作レベル、ゲートレベル、トランジスタレベルなどの各階層毎に、上位レベルから下位レベルに向かって、個別のEDAツールを用いて最適化してきました。
この方法では実は全体としての最適化はできていません。より上位の設計が下位の最適化を考慮できないところにジレンマがありました。
本方式では、動作レベル(最上位レベル)設計におけるLSI設計に《少しの不自由》を持ち込みます。例えば、一般にLSIはレジスタ、機能モジュール、コントローラの組み合わせで構成されますが、動作レベル設計において、情報が常に密に流れる要素群を『強結合』と定義し配置は直結して固定化します。関係性の比較的強い要素群は『弱結合』と定義し、これらのおおよそのフロアプラン(下位レベル設計の一部)を動作レベル設計の中で行います。
【図の説明】 FM:機能モジュール、赤:レジスタ、緑:コントローラ
『強結合』および『弱結合』は関係性からさらに『弱結合グループ』(図のグレーの領域)を作り出します。これらの定義とおおよそのフロアプランとを動作レベルの中で同時に実行します。結果的に、『強結合』、『弱結合』、『弱結合グループ』の3つのモジュールをスマートに動作レベル設計します。
これによって予め情報のパスをできるだけ最適化した上位設計が可能になります。
下位設計では、『弱結合』の要素およびグループの中の最適設計を行えばよいことになります。
技術の特徴
LSI設計技術に革新をもたらす新しい考え方です。
上位の階層設計において下位で予め自由度を制限して、ある範囲の最適化を行っておきます。これにより、高速化、エネルギー消費最小化などの最適設計が可能になります。
レイアウトの最適化と電源管理の最適化を行うことでエネルギー消費50%削減が見込まれています。
従来技術との比較
特許出願状況
現時点ではナシ
研究者からのメッセージ
LSIの階層設計に一石を投じる斬新なアイディアを提案しています。LSIの部品どうしに「結び付き」という考えをアルゴリズムレベルや動作レベルで導入することで、物理レベルを極めて見通し良く、余計なマージンなどを取り除いた設計を実現する方式を提案するものです。電力消費や性能を良くし、またばらつきにも強い設計が可能となります。
EDAツール開発ベンダや、自社においてEDAポイントツールを開発している企業において、LSI設計の差別化につながる技術と考えます。
参考:
発表論文:
- 1.
- Akira Ohchi, Nozomu Togawa, Masao Yanagisawa and Tatsuo Ohtsuki, "Floorplan-aware high-level synthesis for generalized distributed-register architectures," IEICE Trans. on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, vol. E92-A, no. 12, pp. 3169-3179, 2009.
- 2.
- Akira Ohchi, Shunitsu Kohara, Nozomu Togawa, Masao Yanagisawa and Tatsuo Ohtsuki, "Floorplan-driven high-level synthesis for distributed/shared-register architectures," IPSJ Trans. on System LSI Design Methodology, vol. 1, pp. 78-90, 2008.
- 3.
- Akria Ohchi, Nozomu Togawa, Masao Yanagisawa, and Tatsuo Ohtsuki, "High-level synthesis algorithms with floorplanning for distributed/shared-register architectures," IEEE/ACM 2008 Int. Conf. on Computer-Aided Design (ICCAD-2008), 2008.