半場 靖
ものつくり組織において必ずリスク(risk)やハザード(hazard)が存在し、例えば設計・計画の不適合、想定外の事象である地震や津波等による設備の停止や倒壊、安全に関する災害及び国際的経済の変動を含む経済的な社会変動リスクや技術の競争が存在し組織としての技術面と経済面どちらも企業の生き残りに際してのリスクマネジメントは不可欠な内容です。
リスク(risk)とは、ある行動に伴って実行しないことによって危険に至る可能性や損害を受ける可能性を意味する概念です。ハザード (hazard)とともに危険性を意味しますが、ハザードは潜在的に危険の原因を指し、リスクは実際に現実に発生して危険となる可能性を組み合わせた概念であります。ハザードは発生する確率が低い場合のリスクは低く、一方確率は低くても発生した場合の被害が甚大である場合はリスクが高いことになります。しかし3.11の東北大地震や最近の頻発する地震のように百年に一度の規模のものも発生していることからリスクは常にあることを前提のリスク管理が必要であります。
リスクマネジメントは、企業などの組織あるいは組織の活動に潜在する不確定性のある事項を整理や分析をして組織のリソースの範囲で適切な対処法を検討してマニュアル化して常に使えるようにして全員の理解ができる現実的な内容にして実施する方法です。リスクの概念を理解することが重要ですが、設計や品質の製品に関する経済性の管理の不適合に起因するものから、人や情報管理の不適合に起因するもの、自然災害に起因するもの、労働災害や環境汚染の発生まで種々考えられます。その対策としてリスクの、保有、低減、回避、移転のいずれかを選択して検討しなければならないことになります。
自らの組織においてリスクマネジメントを実施する場合は、先ず自組織内にいかに多くのリスクが存在するか優先順位を付けて知ることです。組織全体に対してリスクマネジメントを実施するのか、または特定の部署のみ実施するのか、検討範囲を明確にしておく必要があります。
企業等の組織活動には組織に正の影響(利益、社会的評価など)と負(事故、損失)をもたらすリスクが存在しております。リスクマネジメントは何を望ましくない事象として考えるか自らの組織に当てはめて整理することが必要であります。この考えを基にして組織の仕組みや製造設備の妥当性、生産プロセスのチエック、設備と工学的安全活動を始め組織内の管理活動の優先付け、組織改革等の様々な活動として継続的に実施することです。リスクマネジメントは確率的思考やトレードオフ型意志決定を要求するもので、またはリスクを封じ込めることも一つの手法ですが、自然災害等を含めると管理に限界がある場合もあります。
組織やグループで問題点と解決法を抽出する代表的な手法としてブレイン・ストーミング法と集団情報構造化法があります。ブレイン・ストーミング法は少人数のグループで自由奔放にアイデアを出すことにより課題の要素を抽出する方法です。この手法で効果を出すために守るべきことは、①人の意見を尊重する。②自由に意見を述べる。③多くのアイデアを出す。④他人の意見をヒントにしてさらに考えを発展させることです。
集団情報構造化法は少人数のグループ内部の対話を続けてメモでの提案を提出させ課題を記入して、含まれる情報を項目毎に分類することにより課題の関連図等に作成して各項目を構造化します。結果として情報が整理され、実態と課題の全体像を明らかにすることが可能となります。この両手法は組織でできることを継続的に行うことでリスク回避に寄与できる管理手法です。
総括として、リスク(risk)やハザード(hazard)に対処するために企業としては不適合の予防管理や競争に打ち勝つための対策が必要となりますが、リスクマネジメントとしての要目としては、安全管理、労働安全衛生、未然防止活動としてのフェールセーフとシステムの高信頼化、危機管理としての設備の故障やヒューマンエラー、システム安全工学としてのチエックリストやFMEAとHAZAP手法があります。手順化の面では技術と安全及び経営の標準化とマニュアル化と見直しの継続、知的財産化が挙げられます。さらには過去の不適合事例の記録と整理による組織内や関連組織への情報の伝達と顕在化による再発防止と予防の先取りの徹底が必要であります。
2015年3月31日
出身企業:総合重機械メーカー、一般財団法人
略歴:総合重機械メーカーにおいて、火力原子力発電設備の設計、固有技術と管理技術の標準化、品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステム、省エネルギーの研究・指導、品質管理と不適合の予防
専門分野:電気電子の設計、品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステム、省エネルギー(熱、電気)、その他
資格等:技術士(電気電子部門)、エネルギー管理士、電気主任技術者、監理技術者(機械、電気、通信、消防、清掃)、その他
*コラムの内容は専門家個人の意見であり、IBLCとしての見解ではありません