NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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オール溶液・オール室温で形成可能な有機デバイス印刷プロセスの開発

 現状の半導体エレクトロニクスによる深刻な環境破壊や貴重な地球資源・膨大なエネルギーの消費と言った問題を、有機半導体分子の自己組織化を利用した作製プロセスによって解決する。室温で形成可能な塗布式導電材料の開発により、オール溶液、オール室温プロセスによる有機電子デバイス作製法を構築し、環境負荷の大幅な抑制と持続可能な社会の実現を目指している。

研究機関・所属 物質・材料研究機構(筑波) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
氏名・職名 三成 剛生 研究員
研究テーマ名 オール溶液・オール室温で形成可能な有機デバイス印刷プロセスの開発
応用想定分野 有機(印刷)デバイス
技術紹介

 現状の半導体エレクトロニクス作製プロセスは、大規模なクリーンルーム環境と膨大な設備を必要とし、トップダウン方式によって材料を浪費し、莫大なエネルギーを消費しています。そのための環境負荷増大、資源の枯渇や、作製コストの上昇がもたらす経済・経営への影響は、無視できない問題となっています。省エネルギー、高スループット、資源の有効利用が可能な新しいデバイス作製技術の確立が求められています。
そこで、提案者は、現有の浪費型の生産方式から、未だ技術開発できていない大気下で塗布形成可能な導電材料を開発し、印刷エレクトロニクス作製プロセスに融合することで、室温・大気下で形成可能な有機エレクトロニクス作製技術の開発の目処をつけました。代表者は自己組織化によるボトムアップ式(*1)の有機デバイス作製技術に精通し、分担者は室温で塗布可能な唯一の材料であるπ接合導電性金ナノ粒子の合成を行います。それらの要素技術を駆使し、簡便な印刷技術によってエレクトロニクスを低コスト・高効率に作製し、環境負荷の大幅な低減の実現を目指します。

*1:原子や分子等を1つ1つ正確に組み合せることで新しい機能を持った材料を作ってゆく方法

技術の特徴

 エレクトロニクスの製造コストを大幅に引き下げ、その軽量性や柔軟性を活かした新しい用途へ展開できる有機半導体を用いた電子デバイスを開発しています。中でも有機トランジスタの動作特性はアモルファスシリコンと同等程度の性能を有する素材開発の目処が立ったため、有機ELに続いて様々なアプリケーションへ繋げることができます。
 提案者の研究では、溶液に可溶な有機半導体の自己組織化を利用して、溶液から塗布した半導体分子が所定の領域で選択的に結晶化する表面選択塗布法により、分子の自己集積によって有機トランジスタ素子の形成ができます。電極、配線、絶縁層も塗布プロセスによって形成することで、全塗布プロセスによる素子の大量生産も可能です。また分担者が開発した室温で塗布可能な唯一の材料であるπ接合導電性金ナノ粒子を用いることで、劇的な低温下全塗布プロセスを可能とします。
 すでに個々の要素技術は完成に近付いており、オール常温塗布プロセスによる電子素子作製技術の実現が近づいています。簡便な印刷技術により、環境負荷の低い、低コスト・高効率のエレクトロニクスが作製できることが特徴であります。
 本技術の特徴は、現有の浪費型の生産方式から、未だ技術開発できていない大気下で塗布形成可能な導電材料を開発し、印刷エレクトロニクス作製プロセスに融合することで、室温・大気下で形成可能な有機エレクトロニクス作製できる点にあります。

従来技術との比較
特許出願状況

申請準備中

研究者からのメッセージ

 本技術により、室温、大気下で作製可能なエレクトロニクスを実現することで、半導体製造プロセスの大規模な省エネルギー化、温室効果ガス排出削減効果が見込めます。すべてのプロセスを室温で行うことで、プラスチックや紙、ゴムといった柔軟だが熱に弱い基材にもソフトな有機デバイスが形成できるため、柔軟性を活かした魅力的なアプリケーションの開発も可能になります。製造コストも室温・水溶液プロセスでの合成が可能であることから極めて安価です。市場へ貢献度及び地球資源・エネルギーの消費削減に向け貢献度が非常に高くなります。

参考:

(独)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 パイ電子エレクトロニクスユニット
http://www.nims.go.jp/units/u_pai-electron-electronics/index.html

発表論文:

1.
T.Minari et al. Appl.Phys.Lett.,92 173301(2008)
2.
T.Minari et al. Appl.Phys.Lett.,94 093307(2009)
3.
T.Minari et al. Adv.Mater.2011,xx,1-8