バルク木材・木質系材料の流動現象を用いた塑性加工技術(流動成形技術)
世界初の革新的な、バルク木材の塑性加工の実現です。
木質細胞の階層構造に溶剤とバインダあるいは高機能化樹脂を選択的に導入することで、プレス成形時に細胞実質の軟化と同時に細胞間層のセミソリッド化による3次元大すべり変形を実証しました。美麗な天然木材系の自動車内外装部品のグリーンイノベーション化を拓くものです。
研究機関・所属 | 産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門 木質材料組織研究グループ |
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氏名・職名 | 三木 恒久 研究員 |
研究テーマ名 | 木質細胞ヒエラルキー界面をセミソリッド化する非平衡塑性加工技術の開発と自動車用木材・プラスチック複合材料への展開 |
応用想定分野 | 自動車内外装部品や音響、携帯・家電などへの適用によるグリーンイノベーション |
技術紹介
木質細胞間の界面に、選択的に水素結合能を持つ高機能化樹脂を吸着させて細胞界面を局所的にセミソリッド化させた状態で外力を与え、細胞間すべりによる3次元的な大変形と同時に細胞内外の樹脂硬化によって寸法安定化や高強度化・耐衝撃性能をもつ新規木材・プラスチック複合材料を創出します。自動車用内外装部材の適用をめざし、エンプラ並みの高い塑性加工成形サイクルの実現を狙っています。
バルク木材の複層成形も可能
上部より、松+竹+梅 上部より、杉+竹
バルク木材の複層成形も可能
スギによる筐体(表面) スギによる筐体(裏面)
技術の特徴
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- 木質細胞間の界面に選択的に水素結合能をもつ溶剤やポリフェノール系樹脂を吸着させて、木質は超塑性ともみえる変形加工できることを実証しました。
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- その木材円柱バルク試料において、適宜な温度(120~180℃)や細胞界面すべり条件で、一般的な圧縮成形や押出成形速度で150%にも及ぶ3次元大変形を実現すること、そしてバルク木材の流動性をキャピラリーメータ評価(2mmφ)できることを顕在化しました。
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- これを積極的に発現させるため、木質の細胞構造(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)の結束性、その解離性、そして流動性発現へのメカニズム(細胞間でのすべり、細胞自体の軟化)など微細構造変化の観点からの検討をおこないました。
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- 成形後の冷却で、同時に形状保持も兼ねた「再接着」現象を生じ、寸法安定化さらに異なる木質の接着も実現できることを実証しました。この成形体は本来の木質繊維がほぼ変形状態そのままで保有され、かつ成形後の表面は木質肌を見事に再現・維持しています。
従来技術との比較
特許出願状況
特許登録番号4502848 「繊維を有する植物系熱圧成形材料及びその製造方法」
特許登録番号4849609 「植物系材料の成形方法及びその成形体」
特開2008-036941(審査請求中)「植物系材料の成形方法及びその成形体」
特開2010-052426(審査請求中)「植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体」
特開2010-155393「溶媒を用いた木材の流動成形」
特開2010-155394(審査請求中)「植物系材料の成形体の作製方法及び成形体」
特開2012-161933 「植物系材料の成形体製造装置」
特願2012-161932 「植物系材料の成形体製造方法及び植物系材料の成形体」
研究者からのメッセージ
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- 研究者冥理に尽きるこの成果を、木材の復権と地球環境保全への貢献を願っている。自動車内装への適用研究に挑戦したい。特に、自動車内装の高級感、木質感を訴求する高級車ブランド、欧州の自動車業界の門戸を拓きたい。
携帯や家電の筐体、音響、新発想や芸術的な什器や食器等への適用も視野に入る。 - ・
- 現在は、企業との共同研究3件(自動車関連企業を含む)が既に進行中。今後は、さらに適用開発のモチベーションが相当に高い企業と、実際に研究員交換派遣なども視野に、ノウハウ蓄積を含めた挑戦的な実用化研究連携を期待している。
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- 研究基盤技術の強みは「熱分析」で実績もあります。これを通してメカニズム解明の深化、その活用による着想力、目標の実現力に期待していただきたい。
参考:
- 産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門木質材料組織制御研究グループ
- http://unit.aist.go.jp/mrisus/ja/group/advwood.html
最近の学術研究受賞:
- 日本塑性加工学会 優秀論文講演奨励賞(H23年2月28日)
- 「自動車用部材開発を目指した木質材料の流動成形に関する基礎的研究」
- 日本材料学会 木質材料部門委員会 平成23年度業績賞(H24年1月26日)
- 「木質材料の変形加工と熱分析を用いた微細構造変化の評価」