ナノ秒パルス放電プラズマによる世界最高収率オゾン発生機の開発
空気雰囲気中で数ナノ秒の極めて短時間、且つ、数十ミリジュールの極小エネルギーを持ったパルス放電プラズマを安定的に長期間作り出す事により、世界最高収率(200g/kWh)をもった全く新規のオゾン発生機の開発を目指します。
研究機関・所属 | 熊本大学 バイオエレクトリクス研究センター |
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氏名・職名 | 浪平 隆男 准教授 |
研究テーマ名 | ナノ秒パルス放電プラズマによる世界最高収率オゾン発生機の開発 |
応用想定分野 | オゾン発生器、オゾン方式高度浄水処理、直接放電方式排水処理、排ガス処理、その他「ナノ秒パルス電源」を利用した新規分野での応用 |
技術紹介
オゾン生成法として、水の電気分解、空気への紫外線照射、空気(酸素)中での電気的放電の3方法が挙げられますが、現在、エネルギー効率の面より放電法が主流となっています。なかでも誘電体バリア放電は、既にオゾン生成法として確立され、各メーカーから装置が販売されています。しかしながら、既存の放電法では、金属製電極間へ常に電圧を印加しているため、電極間へ絶縁体を挟むことで局所的なアーク放電は抑制できますが、電極間のイオンの加熱は避けられず、これが熱損失となります。その結果、オゾン収率は50g/kWh程度にとどまっています。
今までの研究で、
- (1)
- サブマイクロ秒パルス放電プラズマが「ストリーマ放電」と「グロー様放電」からなる事(図1)
- (2)
- 又「グロー様放電」でイオンが加熱され熱ロスをしている事(図1)、
- (3)
- ナノ秒パルス放電プラズマは「ストリーマ放電」のみで熱ロスが極めて少ない事を突き止めました。(図2)
- (4)
- ナノ秒パルス放電プラズマの形成において、インピーダンス整合が可能となる領域を見つけ、その結果、プラグからプラズマまでの極めて高いエネルギー転送効率の実現可能性を見出しました。(図3)
- (5)
- 同プラズマ形成の為に、メンテナンスフリーなナノ秒パルス電源の開発を実施します。 なお、オゾン発生器を応用の代表例として挙げていますが、特に(4)~(5)の技術が完成すれば、その高いエネルギー効率により種々の応用先が考えられます。
図3 放電インピーダンスの経時変化
技術の特徴
既に実験室レベルでは200g/kWhの高収率を達成している。
実用化に向けては、
- (1)
- ナノ秒パルス放電プラズマ(ストリーマ放電)ではインピーダンスが一定の為、プラグインからナノ秒パルス放電プラズマへのエネルギー転送効率の最大化(75%以上)を目指します。
- (2)
- 現在2kV/ns程度のスイッチは市販されていますが、要求される50kV/nsもの高速な立ち上がりを有するスイッチは存在していません。そのため、そのようなスイッチの開発を目指します。
- (3)
- そのほか、ナノ秒パルス電源の高出力化、長期安定運転の為の諸問題の解決を目指します。
これらの達成により200g/kWhの世界最高収率のオゾン発生機が実現可能となります。
従来技術との比較
電気的放電技術内での比較
具体的には、電気代金30円/kWh、空気を原料として、
既存技術(市販品) オゾン発生能力 50g/kWh(600円/kg相当)
本技術 オゾン発生能力 150g/kWh(200円/kg相当)
特許出願状況
特願2008-335365
研究者からのメッセージ
高いエネルギー効率でのプラズマプロセスを保証するナノ秒パルス放電プラズマ形成用の実用版パルス電源の開発を進めております。用途としては既存技術に比べ3分の1の運転コストによるオゾン方式高度浄水処理、排水処理、排ガス処理設備としての普及が期待されます。また、「ナノ秒パルス電源」の新規分野での活用もあると思いますので、お気軽にご相談下さい。
参考:
多数の文献がありますが、代表的なもののみ記載
電気学会論文誌A, Vol.129, No.1, pp.7-14, 2009, 浪平, 王, 松本, 岡田, 秋山.
IEEE Transactions on Plasma Science, Vol.38, No.10, pp.2746-2751, 2010, T.Namihira, D.Wang, et al.