輸送機器用マグネシウム合金大型軽量部材への高耐食性ナノ結晶皮膜形成技術の開発
マグネシウム合金は優れた軽量性を有するため輸送機器部材への展開が期待されていますが、耐食性が低いという問題があります。本研究では、マグネシウム合金部材を中温・高圧下の蒸気に晒すことにより、Mg-Al系層状複合水酸化物とMg(OH)2からなるナノ結晶層をその部材上に直接成長させ、高耐食性皮膜として利用します。これにより、マグネシウム合金の輸送機器部材への適用を実現させ、温室効果ガス排出削減に貢献します。
研究機関・所属 | 芝浦工業大学 工学部材料工学科 |
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氏名・職名 | 石崎 貴裕 准教授 |
研究テーマ名 | 輸送機器用マグネシウム合金大型軽量部材への高耐食性ナノ結晶皮膜形成技術の開発 |
応用想定分野 | 輸送機器用としての自動車用途及びその他、軽量部材としての用途 |
技術紹介
本研究では、密閉性の大型処理槽(オートクレーブ)内で中温・高圧下の水蒸気とマグネシウム部材を反応させることにより、マグネシウム系化合物の緻密な耐食性ナノ結晶皮膜((110)面に配向したMg(OH)2とMg-Al系の層状複合水酸化物(LDH)のナノ結晶層)をその部材上に直接結晶成長させるための技術開発を行います。最終的には500時間の複合サイクル試験(JIS準拠の腐食加速試験)に耐えうる耐食性皮膜形成技術の確立をめざします。本技術の優位性は、作製する皮膜が
(1)ナノ結晶層の利用による皮膜の緻密性と(2)LDHのアニオン交換能による腐食反応抑制機構
を兼ね備えている点にあり、これらの機能により高耐食性を実現できます。
技術の特徴
密閉性の大型処理槽(オートクレーブ)内で中温・高圧下の水蒸気とマグネシウム部材を反応させることにより、マグネシウム系化合物の緻密な耐食性ナノ結晶皮膜((110)面に配向したMg(OH)2とMg-Al系の層状複合水酸化物(LDH)のナノ結晶層をその部材上に直接結晶成長させます。本技術の特徴は、作製した皮膜がナノ結晶層の利用による緻密性とLDHのアニオン交換能による腐食反応抑制機構を兼ね備えている点にあります。これらの機能により高耐食性を実現できます。
既存技術、競合技術との比較優位点
「技術的な観点」;ナノ結晶層の利用による皮膜の緻密性とLDHのアニオン交換機能による腐食反応抑制機構を兼ね備えています。腐食反応を促進するアニオン類(Cl- やSO43- 等)をLDHのナノ空間内に捕捉可能です。
「大面積処理の観点」;3次元的な複雑形状を有する部材にも均一に処理することができます。
従来技術との比較
特許出願状況
- (1)
- 発明の名称:Mg(OH)2を含む微細結晶体を形成する方法 特願2008-322836(平成20年12月18日出願) 出願人:独立行政法人産業技術総合研究所 発明者:石崎貴裕
研究者からのメッセージ
本技術は、軽いが腐食するというマグネシウムのイメージを払拭するための表面処理技術です。マグネシウムを実際に使ってみたいが、腐食のために使うことを躊躇している方は、お気軽にご相談ください。また、本技術はマグネシウムのみならず、その他の金属材料にも適用が可能です。本技術を使ってみたい方は、是非、ご連絡をお願いします。
参考:
- 独立行政法人産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門金属材料組織制御研究G
- http://unit.aist.go.jp/mrisus/ci/group/micro-cg/micro-cg.html
発表論文:
T. Ishizaki et al., Magnesium hydroxide/magnesium phosphate compounds composite coating for corrosion protection of magnesium alloy by a combination process of chemical conversion and steam-curing, Mater. Lett. 68, 122-125 (2011).