表面にDNAが固定された新しいナノファイバー

疎水性を示す合成脂質の両端に親水性を示すDNA成分を結合させたヌクレオチオド誘導体は水中で自己集合し、核酸塩基部位に依存して、ナノサイズのシート、ファイバー、ベシクル(粒状体)を極めて容易に形成します。
このナノサイズのファイバーはマクロではハイドロゲル状の性状を有することから、化粧品原料や医用材料の新しい応用展開が期待できます。
所属 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 食品分析領域
氏名・職名 岩浦 里愛 主任研究員
研究テーマ名 DNAを利用したナノスケール構造体の製造
応用想定分野
  1. アルコール飲料醸造過程で使用されたビール酵母や焼酎酵母、日本酒酵母の残渣の有効利用。
  2. これらの酵母からDNAを取り出し、DNAと脂質やクエン酸とのヌクレオチド結合体から得られるナノゲル物質の利用分野として化粧品原料や医用材料への応用。

技術紹介

  1. DNA 鋳型による双頭型脂質のらせん状ナノファイバー形成
    長鎖オリゴメチレン鎖の両末端に、アデニル酸、グアニル酸、チミジル酸、シチジル酸を連結した種々の双頭型ヌクレオチド脂質を合成した。これらのヌクレオチド脂質は水中で自己集合し、核酸塩基部位に依存してナノシート、ナノファイバー、 ナノベシクルなど多様なナノ構造を形成した。
  2. ヌクレオチド脂質とレモン果汁(クエン酸溶液)を混合・加熱・放置により均一な直径を有する螺旋状ナノファイバーから構成されるゲル物質を形成した。

技術の特徴

  1. DNAと合成脂質を水中で混合・加温するだけで、表面にDNAが固定された数十ナノメートル以下の直径を有するナノファイバーを作ることができる。
  2. バクテリアセルロース等に比べて低分子から出来ているナノファイバーであるため、物理的な強度は低いが、熱や希釈等で容易にバラバラにすることができる。

従来技術との比較

特許出願状況

  1. 特許公開2009-247315 2009.10.29
  2. 特許公開2010-260011 2010.11.18

研究者からのメッセージ

 これまで、DNAやDNA成分を原料とした機能性材料の製造に関する研究を行ってきました。今までの研究成果を、具体的な形の商品として社会に還元したいと考えています。どうぞよろしくお願い致します。

発表論文:
  1. Iwaura, R.; Ohnishi-Kameyama, M. Construction of supramolecular helical nanofibers using renewable biomaterials: self-assembly of a cytidylic acid-appended bolaamphiphile in lemon juice. Chem. Commun. 2012, 48(53), p. 6633-6635.
  2. Iwaura, R.; Iizawa, T.; Minamikawa, H.; Ohnishi-Kameyama, M.; Shimizu, T. Diverse Morphologies of Self-Assemblies from Homoditopic 1,18-Nucleotide-Appended Bolaamphiphiles: Effects of Nucleobases and Complementary Oligonucleotides. Small 2010, 6(10), p. 1131-1139.
  3. Iwaura, R.; Ohnishi-Kameyama, M.; Iizawa, T. Construction of Helical J-Aggregates Self-Assembled from a Thymidylic Acid Appended Anthracene Dye and DNA as a Template. Chem. Eur. J. 2009, 15(15), p. 3729-3735.
  4. 超分子サイエンス&テクノロジー. 第4章第2節 ヌクレオチドナノファイバー . NTS出版. 2009.
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