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所属 | 筑波大学 システム情報系 |
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氏名・職名 | 安永 守利 教授 |
研究テーマ名 | ギガヘルツ級超高速デジタル信号の波形整形技術の開発 |
応用想定分野 | スマートフォンやパソコン等先端情報通信機器の回路基板、高周波測定器等への応用 |
本研究では、回路基板上の信号線路に種々のコンポーネントが接続される事によるインピーダンス不整合を、伝送線路を分割する「セグメント分割伝送線路」:Segmental Transmission Line(STL)(図1)を用いる事でインピーダンス整合を最適化して、超高速デジタル信号の品質劣化を抑制する波形整形技術を提供する。分割伝送線路は、遺伝的アルゴリズムにより最適化される。31cmの伝送線路で、4GHzのクロック伝送を実証している。また、図2には、2Gbpsのランダム信号伝送の従来技術との比較を示した(スケールアップ比3.0)。アイパターンの改善が顕著である。STL法は、単に信号品質劣化の抑制のみならず、配線間クロストークの抑制、高周波(8GHz)における信号レベルの損失抑制にも大きな効果を示す事が実証されている。
図1 セグメント分割伝送線路(STL)の構造概略
図2 2Gbpsランダム信号による従来技術との比較
セグメント分割伝送線路(STL)手法を用いる事により、回路基板面積を増加させる事もなく、また消費電力の抑制も実現して、GHz以上の高速デジタル信号を高品質で伝送する事を可能とする。分割伝送線路の設計には、組合せ爆発問題を解く必要があるが、この問題は遺伝的アルゴリズムを利用することで解決している。
現在、メモリLSIの信号伝送で主流となっているDDR方式では、数100MHzから信号品質の劣化が顕著となる。また、近年では、LSI間の接続には信号品質の劣化をさけるためにPCI方式が主流になっている。しかし、シリアル接続であるために、回路設計の複雑さや基板面積の増加、消費電力の増加などが課題となっている。
発明の名称:高周波用配線構造及び高周波用配線構造の形成方法並びに高周波信号の波形整形方法
我々が提案する「セグメント分割伝送線」は、"故意に反射ノイズを発生させ、これにより劣化した信号を整形する"というアイデアに基づいています。これは、従来の"ノイズを抑える"設計とは全く発想を逆転したものです。
これまでにメモリバス伝送系や差動伝送系、分岐配線伝送系などに本技術を適用し、その基本的な有効性を示してきました。今後は、この技術を実製品のプリント基板設計に適用し、実用化を目指します。これまでとは全く発想を逆転したアイデアに基づく本技術の実用化に向けて、企業の方々と協力して実用化を進めたいと考えています。