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所属 | 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 畜産物研究領域 |
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氏名・職名 | 木元 広実 主任研究員 |
研究テーマ名 | 乳酸菌の非食品分野(化粧品、育毛剤、ペットフード)への応用に関する研究 |
応用想定分野 | 化粧品、育毛剤、ペットフード、サプリメント、機能性食品 |
本研究では、従来食用として利用されてきていた乳酸菌の特定株(ラクトコッカス ラクチス乳酸菌H61株)の各種生理機能を明らかにしてきた。
H61株乳酸菌を老化促進モデルマウスに経口摂取させることにより、骨密度の減少抑制効果や潰瘍の発生防止効果を示すことを見いだした。
図1.対照群マウス潰瘍有り | 図2.H61株投与潰瘍無し | 図3.H61株投与骨密度減少抑制 |
老化促進モデルマウスへのH61株経口投与は脱毛の抑止効果が有ることも明らかとなり、さらにこのような効果は、H61株の死菌体でも示される。
ヒトの皮膚に対する効果を調べるために39人の女性に対する投与効果を調べたところ、高年齢の群において、H61株の摂取が肌への保湿効果を示した。
図4.頬水分変化量に対するH61株の摂取効果
この皮膚に対する改善効果はH61株の乾燥粉末でも得られることが培養皮膚への添加試験により明らかとなった。
図5に示すヒアルロン酸産生効果試験では有効物質として比較対象となるN-アセチルグルコサミンや他の乳酸菌株よりもH61株乾燥粉末が培養皮膚に対するヒアルロン酸産生効果を示した。
図5.培養皮膚中のヒアルロン酸量に及ぼすH61乾燥粉添加効果
加えて、H61株乾燥粉末は皮膚のコラーゲン含量に関しても、有効物質として比較対象となるアスコルビン酸と同程度の添加効果を示した。また、マウスメラノーマ細胞におけるメラニン産生に対しても抑止効果を示したが、活性成分の特定を含めさらに検討が必要である。
さらに育毛効果についても検討をはじめている。
H61株に続き、更に優れた機能を示す新たな乳酸菌株の開発も進められている。
乳酸菌H61株は優れた老化抑止効果、肌改善効果、脱毛抑制効果を示す。その効果は生菌体によってのみ示されるのではなく、死菌体粉末でも発揮されることから、従来の食品または飲料としての乳酸菌効果の活用のみならず、種々の商品形態でその効果を生かすことが出来る。
更に、保有している約2000株にも及ぶ乳酸菌ライブラリーを活用し、より高機能な乳酸菌の開発も継続して続けられている。
乳酸菌は食品への応用が主流であるため、非食品分野企業とのつながりが少なく、異分野企業とのマッチングを期待しています。化粧品、脱毛抑制、ペットフード分野は今後も需要が大きく延びることが予想され、乳酸菌を利用することで新しい事業を創出できると考えています。
参考: