テーマNo. |
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所属 | 防災科学技術研究所 災害リスク研究ユニット |
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氏名・職名 | 中根 和郎 研究参事 |
研究テーマ名 | 汎用性のあるリアルタイム浸水予測システムの開発 |
応用想定分野 | 自治体、鉄道、道路管理 |
「広域リアルタイム浸水危険度予測システム」は、防災科学技術研究所が開発し試験運用するMPレーダ観測雨量情報(国土交通省河川局が全国11箇所で試験運用を開始したXレイン観測雨量観測情報も利用可能)を用いて、10分更新、1時間先までの10m格子の広域リアルタイム浸水危険度予測を行う。複数のパソコンを用いて、複数分割領域の高速浸水危険度予測を同時に行い、計算結果をWebGISサーバに逐次送信し、インターネットを通じて、防災担当者や自治会などに、詳細な地域の浸水危険度予測情報を10分更新で提供できる。
また、任意地域の浸水危険度予測モデルの構築を容易にするため、モデル作成に必要な領域情報を汎用のGISソフト(ESRI社のArcMap)を使用して、国土地理院の道路網、土地利用、標高などのデータを持つ数値地図データから半自動的に作成できる。
「リアルタイム浸水深自動観測システム」は頑丈でシンプルな電極式道路浸水深センサーとコンパクトなデータロガーで構成されており、街中の路地のカーブミラー、街路灯柱、電柱などのポールに簡単に取り付けできる。また、通常水の無いところが突然浸水するような場合でも的確に浸水深を自動観測できる。観測データはリアルタイムでWebサーバに逐次送信され、インターネットを通じて情報提供される。
「広域リアルタイム浸水危険度予測システム」は汎用のパソコンで稼働でき、システム構築およびそれらの維持管理が低コストである。
「リアルタイム浸水深自動観測システム」は汎用の乾電池6個で半年以上稼動する低電力・低コストなシステムとなっている。
近年、台風や梅雨末期の豪雨に加えて、季節に関わりなく、大小の低気圧の通過に伴い、時間雨量70〜100ミリメートルを越える豪雨が各地で発生している。このため、道路冠水による車の浸水事故、低地や地下室・半地下室の住宅の浸水被害が各地で起こっている。速い浸水現象で逃げ遅れて死亡する被害もあちこちで起こっている。これら被害は早期の浸水情報に基づく、迅速な応急対策で被害軽減できるものが多くある。
一方、MPレーダ観測雨量情報などの高精度・高解像度なリアルタイム雨量情報の普及、浸水シミュレーション技術の向上、標高・土地利用・水路や道路網などの詳細なGISデータの電子化された数値地図データの普及、汎用パソコンの高速化・大容量メモリー搭載・低価格化など、多くの人が周辺の浸水情報をリアルタイム計算できる環境が整いつつある。本リアルタイム浸水予測システムが活用されることを願っている。
“リアルタイム浸水深自動観測システム”頑丈で、何処でも容易に設置でき、停電力・低価格のシステムであり、道路のアンダーパスなど多くの浸水危険箇所に設置し、早期の浸水情報が周辺住民やドライバーに迅速に伝えられ、車や家財の浸水被害の軽減に役立てたい。
参考: