高精細裸眼立体ディスプレイ

多人数が立体像を観賞できる裸眼立体映像表示装置の改良提案である。従来から知られている凸レンズアレイの背後にあるドットマトリックス光源の発光位置を観察者に追従させて変える方式であるが、その欠点である輝度ムラを低減し、パネルの解像度をフルに利用できる高精細かつ高画質の裸眼立体ディスプレイを実現している。
所属 筑波大学 システム情報系
氏名・職名 掛谷 英紀 准教授
研究テーマ名 高精細裸眼立体ディスプレイ
応用想定分野 医療・診断・手術、手術ロボット、特に内視鏡手術が有力

技術紹介

 本提案の裸眼立体映像表示装置は、バックライトの指向性と液晶に提示する画像を120Hzで高速に切り替えることで裸眼立体視を実現する方式である。指向性バックライトは、凸レンズアレイの背後にあるドットマトリックス光源の発光位置を観察者に追従させて変化させることで実現するため、発光位置を増やすことで同時に多人数が立体像を観賞できるという利点をもつ。この基本方式は古くから知られていたが、輝度ムラが激しく実用に耐える立体像の提示はこれまでできなかった。この問題を解決するため、デルタ配列されたレンズアレイと垂直方向拡散を組み合わせた方式を提案している。これにより、パネルの解像度をフルに利用できる高精細かつ高画質の裸眼立体ディスプレイを実現している。

 ドットマトリックスの光源としては、液晶のピクセルと同期して発光させることが必要であり、かつ観察者の位置を検知して左右の目に視差のある画像を届けるため、プラズマTVパネルなどを使用することが必要である。

 基本的には、時分割表示方式であり、解像度はパネルの解像度を保つことができる。

 また、観察者の位置を検知し、ドットマトリックス光源位置を制御し、観察者に適応した角度に画像を照射でき、複数の観察者に立体視画像を提供できる。

技術の特徴

  • 凸レンズアレイと垂直拡散板を組み合わせた指向性バックライトによる時分割裸眼立体表示方式
  • 同時に複数人が観察可能なフル解像度の裸眼立体ディスプレイが実現
  • 視域もある程度確保可能
既存技術、競合技術との比較優位点
ナナオ FDF2301-3D:
 時分割表示方式であり、解像度はパネルの解像度を保つことができる。しかしながら、観察位置は限定され、相当に狭い範囲でのみ、立体視が可能になる。
 http://www.eizo.co.jp/products/id/fdf2301_3d/
東芝 20GL1:
 インテグラルイメージング方式で、視聴位置に応じて、位置や角度が異なる複数の映像を同時に映し出すもので、視聴者は左右それぞれの目で異なる映像を捉えることにより、専用メガネがなくても立体映像として認識することができる。
 この原理を応用した独自の映像処理技術により、9つの映像(9視差映像)をリアルタイムに生成し、液晶パネルから垂直レンチキュラーシートを通して映し出すことで、高画質3D映像を実現した。レンチキュラーシートにより9つの画像を同時に生成するため、解像度は1/9となる。
 http://www.toshiba.co.jp/regza/option/gl1/quality.html
TRIDELITY MV5500,MV6500:
 東芝と同じ方式であるが、5つの映像をレンチキュラーにより生成し、立体視を可能にしている。解像度は東芝と同じように、1/5となる。
 http://www.aec.co.jp/mm/products/tridelity.htm

従来技術との比較

特許出願状況

特願2013-026398

研究者からのメッセージ

 診断・手術シミュレーションおよび内視鏡手術などの医療応用が最も有力ですが、ゲーム等のエンタテインメントへの応用も考えられます。ディスプレイ製造技術を持つ企業が製品化することを希望します。

参考:
筑波大学 システム情報工学研究科 知能機能システム専攻 視覚メディア研究室
http://vmlab.kz.tsukuba.ac.jp/jp/index.html
発表論文:
  1. Shuta Ishizuka, Hideki Kakeya. Flat Panel Autostereoscopic Display with Wide Viewing Zone Using Time-Division Multiplexing Backlight. to appear in SID Digest of Technical Papers,(2013).
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