バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体による高効率薄膜太陽電池の開発

バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体のpn接合による高いエネルギー変換効率(25%以上)を実現できる薄膜太陽電池の開発。バリウム・シリサイド(BaSi2)のバンドギャップは太陽電池としては理想的な1.4eV に調整が可能で、しかも光吸収係数とキャリア拡散長がともに大きく太陽電池に有利な特性を有している。現在はバリウム・シリサイド(BaSi2)半導体をシリコン基板上に構成しているが、将来的にはガラス基板上に構成することを目指している。
所属 筑波大学 数理物質系・物理工学域
氏名・職名 末益 崇 教授
研究テーマ名 新しい半導体を用いた薄膜結晶太陽電池
応用想定分野 薄膜太陽電池

技術紹介

 本研究では、資源が豊富なシリコンとバリウムを材料として使い、バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体のpn接合による高いエネルギー変換効率(25%以上)を持つ薄膜太陽電池を開発している。バリウム・シリサイド(BaSi2)のバンドギャップは太陽電池としては理想的な1.4eV に調整が可能で、これまでの研究で光吸収係数とキャリア拡散長がともに大きいという太陽電池に有利な特性を有していることが判明した。従来、バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体膜の生成はシリコン基板上に分子線エピタキシー法を使用して形成していたが、2011年に東ソー株式会社と共同研究を始めたことにより、バリウム・シリサイド(BaSi2)のスパッタ・ターゲットが入手できることになり、スパッタ法で大面積向けの研究もできるようになった。現在はバリウム・シリサイド(BaSi2)半導体をシリコン基板上に構成しているが、将来的にはガラス基板上に構成することを目指している。

技術の特徴

 バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体は、材料となるシリコンとバリウムが資源として豊富で安価であるという特徴を備えている。しかも、バリウム・シリサイド(BaSi2)半導体薄膜の単接合型太陽電池で25%以上というエネルギー変換効率が期待でき、更にタンデム型へ展開することも考えられる。将来的にはシリコン基板の代わりに安価なガラス基板上にバリウム・シリサイド(BaSi2)の薄膜太陽電池を構成することを目指している。

既存技術、競合技術との比較優位点

 シリコン系の薄膜太陽電池で25%以上のエネルギー変換効率が期待できる点が最大の優位点。

従来技術との比較

特許出願状況

  1. 特許第5110593号、「半導体材料、それを用いた太陽電池、およびそれらの製造方法」Oct. 19, 2012
  2. 特許第4998923号、「シリコンベースの高効率太陽電池およびその製造方法」May. 25, 2012
  3. US Patent No. 7999178、"Solar cell and method of producing the same," Aug. 16, 2011
公開特許
  1. PCT/JP2010/057936 末益崇, "半導体装置およびその製造方法並びに太陽電池"

研究者からのメッセージ

 光吸収係数、少数キャリア拡散長、pn制御等、太陽電池に必要な基礎物性は申し分ありません。
NEDOプロジェクトへの共同申請をしていただける企業との連携を希望いたします。

参考:
筑波大学 大学院数理物質科学研究科 環境半導体・磁性体研究室
http://www.bk.tsukuba.ac.jp/~ecology/

 最新の情報が掲載されています。

発表論文:
  1. T. Yoneyama. et al. Formation of polycrystalline BaSi2 films by radio-frequency magnetron sputtering for thin-film solar cell applications. Thin Solid Films. 2013, 534, p. 116.
  2. M. Ajmal Khan et al. In-situ heavily p-type doping of over 1020 cm-3 in semiconducting BaSi2 thin films for solar cells applications. Applied Physics Letters. 2013, 102, p. 112107.
  3. W. Du et al. Improved photoresponsivity of semiconducting BaSi2 epitaxial films grown on a tunnel junction for thin-film solar cells. Applied Physics Letters. 2012, 100, p.152114.
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