有望技術紹介

57 VOCを選択的に吸着・脱着する結晶材料

弘前大学大学院理工学研究科
揮発性有機化合物(VOC)の吸着材料やガス分離材料への利用が期待できる結晶性材料を開発した。

【本技術の概要】

弘前大学大学院理工学研究科の太田俊助教は、結晶状態を保ちながら、極性小分子の可逆な吸着と脱離を実現する結晶性材料を開発した。応用展開としては、揮発性有機化合物(VOC)の吸着材料やガス分離材料等への利用が期待される。

本研究で合成した錯体化合物によるVOCの一種であるジエチルエーテルの吸着と脱離に伴う結晶構造の変化を図に示す。
何も吸着していない状態では、図(左)に示すように閉じた構造をとるが、ジエチルエーテルを吸着すると、図(右)に示す構造へと結晶性を保ちながら変化する。脱離すると、また図(左)の構造へと戻る。左の構造では、錯体分子間に水素結合が働いているのに対して、右の構造では、その水素結合が切断し、吸着したジエチルエーテルと水素結合を形成する。水素結合は共有結合、イオン結合、配位結合に比べて弱い結合であるため、結晶への負荷が比較的小さく、結果として、結晶性を保ったままの構造変化が達成できた。

【本技術の特徴】

① VOCの吸着・脱離機能
水素結合を形成できるVOCを吸着しやすいと考えられ、ジエチルエーテル以外にも、アセトン、テトラヒドロフラン、プロピオンアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンも同じメカニズムで吸着する。また、アセトンと酢酸エチルの脱離を検討したところ、減圧条件下で加熱(100℃)すれば、再生できることが明らかになった。アセトンと酢酸エチルの吸着と脱離はそれぞれ10回繰り返しても吸着能力は衰えなかった。
② VOCの分離機能
水素結合を形成しにくいVOCはまったく吸着しない。この性質を利用すれば、例えばTHF(テトラヒドロフラン)とヘキサンの混合物(物質量比1:1)からは、THFだけを選択的に吸着することができる。
③ 熱安定性
窒素気流下において400℃まで、安定である。
④ 水蒸気の吸着機能
モレキュラーシーブ3Aに比較して多くの水蒸気を吸着できる。

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