モーターで高度な制御を行うためには、アルゴリズムの開発とソフト開発・検証が大変であったが、Analog Devices社のモーション制御システムを活用することで効率的な開発が可能となる。
【本技術の概要】
モーターに高度な制御性を持たせるには、「静音」「低消費電力」「安全性」の要求を満たさなければならずアルゴリズム開発からスタートする必要があり、アルゴリズムの修正にともなうソフトウェアの開発と検証に多くの時間を必要としていた。そのためハードルが高いと感じているエンジニアが多かった。 この対策として丸文株式会社は、Analog Devices, Inc.のTrinamicに注目した。Trinamicは、モーターの制御アルゴリズムを搭載したモーション制御システムで、静音、省エネ、ダウンタイム削減をハードワイヤードで可能にするし、モーター制御に必要なアルゴリズムを標準搭載している。わずか数個の設定でモーターを動作させることができ、開発期間の短縮にもつながる。
【本技術の特長】
Trinamicの特長である独自のモーションコントロールアルゴリズムは、以下の通り。
① StallGuard(脱調防止機能):モーターが停止状態になるとトルクは増加し、モーターの振動や異常な発熱を引き起こす可能性がある。StallGuardは負荷をモニタリングしモーター制御を調整することでモーターの保護と安定した運転を実現する。
② CoolStep(省エネ機能):センサーレスでモーターの適切な電流を自動的に制御する技術で、モーターの負荷や速度に応じて、必要最小限の電力を供給し省エネ効果を高める。
③ StealthChop (静音機能):ステッピングモーターでは磁歪変動によって可聴音が発生する場合があるが、PWMデューティサイクルに基づいて電流を変調することでモーターの機械音を低減する。
<特長まとめ>
・ハードワイアードアーキテクチャーで高精度制御アルゴリズムを標準搭載
・オンザフライでパラメータ変更が可能
・省電力、静音性/ダウンタイム軽減などの精緻な制御アルゴリズム
・プラグ&プレイでの効率的な開発を実現
【スムーズな動作を容易に実現】
同社が提供するモーション・コントロールは、高度に自動化された製造装置の位置、速度、加速度の制御機能である。物体を適切なタイミングで適切な場所に配置する必要がある場合などに必須となる。
下図にコップ表面の振動の違いを台形運転とS字運転の違いを示した。S字運転(上段)では、モーターが滑らかに加速し、衝撃緩和と高速搬送を実現した。これに対して、台形運転(下段)は一定の速度まで単純に加速・減速する場合、開発の難易度は抑えられるが、搬送物に衝撃が伝わる可能性が高くなり、こぼれ・転倒など搬送状況へ影響を与える。
Trinamicシリーズでは、「速度変化を多段階で実行する」「動きを滑らかに補完する」といった制御アルゴリズムがコマンドセットとして用意されているため、複雑な動きを簡単に実現させることができる。
【開発・評価環境】
モーションシステムの開発評価には、各種の評価ボードをラインナップしており、Trinamic製品の統合開発評価として評価用GUI「TMCL-IDE」を無償提供している。これを使用しプラグアンドプレイで評価ボードをリアルタイムに確認しながらモーションシステムの開発が可能である。