有望技術紹介

108 曲がるタンデム型太陽電池でEVを試作

株式会社PXP:
ペロブスカイトとCIS太陽電池のタンデム構造で「曲がる太陽電池」を作成、変換効率26.5%を達成し、これを搭載したEV三輪車の実証実験を行った。

【本技術の概要】

 PXPは2020年設立の光電変換素子に特化したベンチャー企業。ペロブスカイト/カルコパイライトのタンデム構造を用いた軽くて曲がる割れないソーラーパネルや、全固体電池一体型ソーラーパネルなどの研究開発を行っている。
 2024年5月21日同社は「曲がる太陽電池」を搭載したEV三輪車の実装実験を行った。車体屋根部に貼り付けた、厚さ約1㎜以下の曲がる太陽電池パネルは全重量1kg未満の超軽量で、1日の太陽光による発電のみで、約25km〜30kmの走行が可能になると見込まれる。
 太陽電池には、可視光領域に高い変換効率をもつペロブスカイト薄膜太陽電池と、赤外光に高い変換効率をもつ銅・インジウム・セレンを主元素としたカルコパイライト光電変換層(CIS太陽電池)を積層したタンデム型を採用し、曲がる太陽電池では発電効率をトップレベルの26.5%まで高めた。

【背景・考え方】
 長波長を透過するペロブスカイトは、トップセルの材料として有望だが、理論変換効率が最大となる1.67eV付近に感度を有するペロブスカイトでは耐久性が良くないという課題があった。一方、比較的高耐久性のある1.55eV付近に感度を有するペロブスカイトを用い、ボトムセル材料としてカルコパイライト系を用いると最も高い理論変換効率を示すことがわかった。そこで、曲げられるが割れないといったフレキシブル性を活かすため、ペロブスカイトとカルコパイライト組み合わせを採用した。
 同社は、2023年11月に変換効率23.6%を達成し、2024年4月1日には変換効率26.5%を達成した。2024年より量産パイロットラインの稼働を開始している。

タンデムの材料と効率、特徴の関係

【タンデム型太陽電池と全固体電池を一体化】
 PXPは、ペロブスカイトとカルコパイライトを組み合わせたタンデム型太陽電池と、全固体電池を一体化した最適セル(発電素子)構造を開発(図6参照)。アラブ首長国連邦・ドバイで2023年11月15~18日に開催された国際会議「第一回 Middle East and North Africa Solar Conference」において最優秀論文賞を受賞した。
 同論文では、極薄の金属箔を基板兼共通正極として、受光面側にペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム型太陽電池を形成し、反対型に全固体電池を形成することで、発電機能と蓄電機能を一体化したセル構造を提唱した。最適設計を施すことで、日中の太陽の動きや天候変化、季節変動などの環境変化に対して、パワーコンディショナー(PCS)を用いずにセル単体で発電・蓄電・放電の電力制御が高効率で自動運転できることを示した。
 外部からの電力供給に頼らず、移動が可能なことから、災害時などの非常時において移動手段および電源としての機能も持つ。都市部や過疎地における持続可能な移動手段として期待される。

【今後の展開】
 同社は今後、軽量性、曲面への取り付け性、高い信頼性、耐久性を求められる応用分野として、自動車、航空機、ドローンなどのパートナーと商品化を進めて行く計画である。

【専門家のコメント】
 ペロブスカイトは将来の太陽電池のブレークスルーになるものとして世界中で開発競争が盛んであり、さらなる効率アップのためにシリコンとのタンデム型が多く検討されているが、曲がる特徴を活かして用途を広げるためにCIS型とのタンデムを選んだのは実用化への有力な方法と見られる。


PDFのダウンロード(詳細説明と問合せ先)

関連記事

TOP