立命館大学野間春生教授等の研究グループが開発した超小型MEMS触覚センサは、微細構造のカンチレバーを用いて接触による外力を3次元的に検知することができ、多軸での力計測を可能とした。
【本技術の概要】
ヒトの五感の中で“見る聞く”の感覚は、CCD素子やマイクの機器を介してデジタル信号として画像/音響認識技術として研究や応用が進展し、多くの商品として実用化されている。一方、重要な感覚である触覚は、ヒトの皮膚表面にある機械的触覚受容器が発見され、その機能も解明されているが、その触覚受容体に匹敵する触覚センサ素子が実用化されていなかった。その中で、立命館大学情報理工学部メディアエキスペリエンスデザイン研究室の野間春生教授と新潟大学の研究グループは、MEMS技術を応用した超小型の触覚センサを開発した。
今回開発した触覚センサは、人間並みの機能を持つことから、ロボットの指先に実装し物体を把持している状態を識別する実験を行った。その結果、物体を持ち上げて徐々に離すという動作で、開発した触覚センサからリアルタイムのデジタル信号を得ることができた。今後、介護ロボット等、人と共存しサービスを提供するヒューマンサポートロボットに十分な案全性と作業性を与える触覚機能として期待される。
【基本原理】
開発センサは、Si基板の上に極小マイクロカンチレバーを複数個作成し、全体を弾性体(エラストマ)で覆った構造で、弾性体の上部に垂直方向の圧力と水平方向の剪断力を加えると変形し、同時にカンチレバーの傾斜角度も変わる。この傾斜角度から弾性体上部に作用する外力を3軸(圧力、剪断力2軸)として電気的な出力信号から行列演算アルゴリズムにより3次元ベクトル力をリアルタイムに計測可能となった。
本センサの検知素子であるカンチレバーは、自動組み立て技術を応用した表面MEMSプロセスで製造された微細構造である。そのため、高い歩留まりで安価に製造が可能である。試作センサは5mm角チップとして製造されフレキシブル基板を介してドライバ回路に接続されている。独自の実装設計により、数㎏の荷重をかけても破損することなく計測が可能である。
【本技術の応用事例・想定用途】
本プロジェクトで開発した超小型多軸触覚センサは、そのサイズと多軸での力計測が可能なことにより、様々な分野での応用が期待できる(図6)。ロボット関連では、触覚センシングを利用した柔軟物ハンドリング、心地よさを理解するハンドマッサージの力覚センシング、ランニングトレーニングのための触覚センサを備えた荷重計測シューズなど多分野への応用を期待している。
具体的な応用例は、下記PDFをご覧ください。
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