東レグループは、マイクロLEDディスプレイ製造の鍵となるLEDチップを高速に配列するためのレーザー転写装置とレーザー転写用材料、LEDと配線の接合プロセスを簡素化する接合材料を開発し、マイクロLEDディスプレイの発展・量産化に貢献する。
【本技術の概要】
マイクロLEDディスプレイは、輝度や色域、コントラストや信頼性などの特性に優れる他、高発光効率LEDを光源に用いることで低消費電力化を実現し、高性能かつ環境低負荷な次世代ディスプレイとして期待されている。マイクロLEDディスプレイ製造では、膨大な数のLEDチップが必要となる。例えば、4Kテレビの場合、約25百万チップ(画素数3840×2160に各3色)が必要で、量産化に向けてはマイクロLEDの転写スピードの向上が不可欠であった。このために、東レは「レーザー転写装置」、「レーザー転写用材料」、「接合材料」 などをトータルソリューションとして開発し提案している。
【本技術の詳細】
【レーザー転写装置】
東レエンジニアリングが開発したレーザー転写装置は、マイクロLEDディスプレイ製造工程において効率化が望まれていた大量のマイクロLEDをディスプレイ基板に設置する工程で使用するもので、独自開発したAI技術を応用した「チップマッピングアルゴリズム」を搭載している。個々のマイクロLEDの発光傾向を判別し、ディスプレイ中での配置場所を最適化することで、ディスプレイの自然な発光・発色を実現する機能も備えている。次世代法レーザーマストランスファー(RAP-LLO)とも呼ばれるもので、従来法と比べ約180倍の生産性の向上を実現した。
【レーザー転写用材料】
東レは、マイクロLEDディスプレイの製造工程で多数のLEDチップを基板上の任意の位置に高速で配置するためレーザーマストランスファーに特化したポリイミド系転写材料を開発した。
その特徴は、以下の通りである
①波長355nm及び248nm適応する高感度化
②粘着剤残渣やデプリ(飛散物)が出ない
③転写材上へのマイクロLEDチップの配置が容易。
【接合材料】
東レは、感光性導電材料RAYBRID®の技術を発展させ、「接合材料」を開発した。「接合材料」は、LEDチップの電極と基板上の配線を接合するための材料で、従来に比べ低温・低圧・短時間での接合を可能にするとともに、これまで課題とされていた不良LEDチップの交換を容易にし、製造時の歩留まり改善につながるものである。
【今後の予定】
東レは、これまでマイクロLEDディスプレイ向け材料として、LEDチップの配線形成のための「絶縁材料」、ディスプレイの黒さを引き立たせ高コントラストを実現するための「黒色材料」、LEDチップの基板を薄膜化あるいは剥離除去する工程で用いる「仮貼り材料」などをすでに量産化しており、さらに、鮮やかな発色と高輝度化を両立する「隔壁材料」もラインアップしていくことを計画する。マイクロLEDディスプレイに求められる材料と製造・検査装置を東レグループのトータルソリューションとして提案し、マイクロLEDディスプレイの発展・量産化に貢献して行く。