ソフトバンクと共同で、現行のリチウムイオン電池(LiB)の重量エネルギー密度の約2倍となる500Wh/kg級リチウム空気電池を開発し、室温での充放電反応を実現した。エネルギー密度ならびにサイクル数の観点で世界最高レベルであり、5~10年後の実用化を目指す。
【本技術の概要】
金属空気電池は、負極で金属の溶出、正極では溶出した金属が空気中の酸素と反応して放電析出物となる。この原理は古くから知られており、すでに亜鉛空気電池などは一次電池として実用化されている。
今回開発したリチウム空気電池は充放電可能な二次電池として、正極(酸素極)、セパレータ+電解液、負極(金属リチウム)を積層した構造とした。放電反応では、負極で金属リチウムが電解液に溶出し、正極で酸素と反応して、過酸化リチウムを析出させる。この過酸化リチウムの析出量が蓄電容量となるため、正極のカーボン材料は、高空隙率・高比表面積を有する材料が選択されている。
また、充電反応では、放電反応とは逆で、正極の過酸化リチウムが分解し酸素を放出、負極では金属リチウムが析出する。この時、正極・負極双方において、高い可逆性で反応が進行するような電解液材料が必要となる。同研究チームは、リチウム空気電池の持つ高いポテンシャルを最大限に引き出すことができる多孔性カーボン電極や酸化反応を促進する電解液などの独自材料を開発してきた。また、NIMS-SoftBank 先端技術開発センターで開発した電解液注液技術や電極積層技術である高エネルギー密度リチウム空気電池セル作製技術をこれら材料群に適用することで、現在のリチウムイオン電池のエネルギー密度を大きく上回る 500Wh/kg 級リチウム空気電池の室温での充放電反応を世界で初めて実現した。
【特性】
同研究チームは、世界中で報告されているリチウム空気電池の性能を網羅的に調査し、定量的、客観的に比較した。一般的に、エネルギー密度とサイクル数はトレードオフの関係にあるため、図の右上に点があるほど高性能の電池である。
この結果、NIMSとソフトバンクが開発したリチウム空気電池は、エネルギー密度ならびに、サイクル数の観点で世界最高レベルであることが明らかとなった。サイクル数はまだまだ実用レベルから遠いが、現在開発中の改良材料群を搭載することで、サイクル寿命の大幅な増加を図り、リチウム空気電池の実用化につなげる方針である。
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