生体に接触するウエアラブルセンサー用の柔軟電極シートの導電粘着剤を開発した。違和感・装着感のない柔軟性を備えた生体センサとして活用できる。
【本技術の概要】
これまでの脳波計では頭に装着する部分に櫛型電極を用いているため、違和感や長期装着による痛みが生じていた。これらを解決するため大阪大学産業科学研究所 関谷研究室では、脳波計測機用に生体導電粘着剤を用いた。これにより、生体信号計測を長時間行うことが可能で、かつ装着者(特に新生児~小児)に負担の少ないウエアラブルセンサが開発された。
【本技術の基本原理】
開発したセンサは、柔軟電極シート、およびそのシートに利用する生体導電粘着剤有機材料(有機半導体、極薄膜ポリマー基板、エラストマーなど)を用いることにより、厚さ数μmで、重さが数~数十mgの有機エレクトロニクスセンサである。当該柔軟電極シートは2倍以上も伸長可能であるため、皮膚表面で生じる歪へ追従しやすい特徴を持つ。同様に伸長可能な生体導電粘着剤は、皮膚に貼り付くための良好な接着力を持っている。そのため、安定に皮膚表面から生体活動電位が計測できる。従来の医療現場に利用されていたゲルペーストと比較すると、糊残りがなく、装着感をなくすことができた。
【本技術の特徴】
- 本研究で開発したパッチ式脳波計は、医療機器並の計測精度を持ち、重量10gと軽量で、小型(数センチ角)、薄型である。
- 電極シートは2倍以上伸ばすことができるため、歪に追随しやすい。
- 人の皮膚に対して良好な接着性をもつ。
- 装着していることを意識することがない。
- 従来、医療現場で使用されているゲルペーストと比較して、糊残りが少なく、長く装置していても皮膚の炎症を起こすことがない。
【本技術の応用事例・想定用途】
当該センサの想定される用途としては、体動ノイズ除去機能付きの差動増幅回路、スマートスキンなどに利用可能な磁気センサ、取り付けたことを意識しないで計測を可能とする透明電位センサ、パッチ式脳波計を実現する伸縮可能な柔軟電極シート、発電・蓄電機能付き脈波センサシートなどがある。いずれも、柔軟性を有するセンサでありながら、精度高い生体信号計測が実現可能としたものである。
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