単結晶級性能をもつ多結晶配向セラミックスの開発
鉛系よりも高性能で経済的にも優れた非鉛圧電アクチュエータの製造技術開発を目的としています。同材料は光学機器の精密位置制御やエンジン燃料噴射向けへも利用されます。鉛系を上回る特性と経済性にも有利なチタン酸ビスマスナトリウム系酸化物を対象として、結晶相制御、磁場中結晶配向と焼結時自己組織化を組合せた新規2段階配向制御、さらに積層化技術も開発して、高性能低負荷環境化を達成します。
研究機関・所属 | 長岡技術科学大学 物質・材料系 |
---|---|
氏名・職名 | 田中 諭 准教授 |
研究テーマ名 | 新規配向制御による単結晶級性能をもつ多結晶圧電セラミックスの開発 |
応用想定分野 | 圧電セラミックス、機能性セラミックス、構造用セラミックス、複合材料 |
技術紹介
種々の精密な位置制御へ利用されるマイクロアクチュエータの非鉛化に向けて、PZT(鉛)系を上回る特性を目指した非鉛セラミックスを開発しています。非鉛系材料開発研究は結晶相の探索から、集積化による高特性化へシフトしつつあります。そこで本研究では、安価な物質を用いて、磁場を用いた配向材料開発を基盤としつつ、材料の製造プロセス時の焼結時の微細構造変化を配向化にも利用して、高特性を達成させる技術開発を行っています。圧電材料以外にも結晶異方性のある物質への応用が可能な基盤技術開発です。産業ニーズにもこたえつつ、かつ社会環境における期待にも応えることが可能となります。
図 1 磁場配向が開く機能性セラミックス
技術の特徴
多結晶なのに原子配列を揃えることで、単結晶と同等の特性を発現させる技術です。
- (1)
- 磁場中での結晶磁気異方性に由来する配向であるため、球状粒子を非接触で配向できます。
- (2)
- 焼結中の配向促進を利用することで、高磁場から低磁場へ下げることが可能です。
- (3)
- 立方晶以外のあらゆる物質に利用可能です。
- (4)
- 高い注目を集めています。
従来技術との比較
特許出願状況
特許第4378535 精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法
研究者からのメッセージ
磁場配向技術は汎用性の高い基盤製造技術になります。幅広い分野への展開が可能です。圧電以外のセラミックスについても、興味があります。
発表論文:
- 1.
- "Particle oriented bismuth titanate ceramics made in high magnetic field" A.Makiya、D.Kusano、 S.Tanaka、 N.Uchida、 K.Uematsu、 T.Kimura、 K.Kitazawa and Y. Doshida、 J.Ceram.Soc.Jpn、 111、 702-704(2003)
- 2.
- "結晶配向セラミックスのための磁気キネティックプロセッシング"、田中諭、マテリアルインテグレーション、23、94-100 (2010)
- 3.
- "Fabrication of crystal-oriented Barium-bismuth titanate ceramics in a high magnetic field and subsequent reaction sintering"、S.Tanaka、Y.Tomita、R.Furushima、H..Shimizu、Y.Doshida and K.Uematsu、 Sci.Tech. Adv. Mater.、10、014602 5pages (2009)
- 4.
- "Fabrication of c-axis-oriented potassium strontium niobate (KSr2Nb5O15) ceramics by a rotating magnetic field and electrical property"S.Tanaka、T.Takahashi、R.Furushima、A.Makiya、K.Uematsu、 J.Ceram.Soc.Jpn. 118、722-725 (2010)