外部装置不要の自励振動ゲルアクチュエータ及びそれを用いたマイクロ流体素子の開発
化学的なエネルギーを直接的に力学的なエネルギーに変換して駆動する新規マイクロゲルアクチュエータを実現しております。外部装置フリーの新規ゲルアクチュエータは、ラボオンチップ等の微細空間に搭載可能なマイクロ流体素子(マイクロポンプ、マイクロバルブ等)にマイクロアクチュエータとして組み込むことが可能です。化学反応を駆動源とするマイクロゲルアクチュエータは安価であるため、マイクロ流体素子のディスポーサブル化が可能です。
研究機関・所属 | 産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門 |
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氏名・職名 | 原 雄介 研究員 |
研究テーマ名 | 化学反応を駆動源とする超省エネ型・新規自励振動ゲルアクチュエータを用いた外部装置フリーのマイクロ流体素子の開発 |
応用想定分野 | ラボオンチップ(血液診断や環境診断用)に搭載可能なディスポーザブルなマイクロ流体素子 |
技術紹介
従来、MEMSやラボオンチップ等の微細空間で働くマイクロアクチュエータは、素子に対して非常に大きな外部装置が必要でした。本研究では、外部装置が不要で自励的に駆動可能な完全人工合成型のマイクロゲルアクチュエータを実現しております。このようなマイクロゲルアクチュエータを、マイクロ流体素子(マイクロポンプやマイクロバルブ等)のアクチュエータ部材として利用可能なレベルまで性能を向上させ、ラボオンチップ等への実装実験を通して実用化を目指します。そのために下記の課題を検討中です。
- (1)
- マイルドな条件下で駆動する新規ゲルアクチュエータの開発
- (2)
- 光の影響を受けず安定駆動する新規ゲルアクチュエータの開発
- (3)
- ゲルアクチュエータの発生力増強とエネルギー効率の向上
- (4)
- ゲルの接着性制御技術によるバイゲル型アクチュエータの開発と駆動方向制御技術の確立
- (5)
- 新規ゲルアクチュエータを用いたマイクロポンプ・バルブ等の開発とMEMS・ラボオンチップへの実装
マイクロゲルアクチュエータは、外部装置が不要なだけではなく安価であるため、例えば血液診断用ラボオンチップに搭載可能なマイクロポンプ等をディスポーザブル化することが可能です。
技術の特徴
- (1)
- 外部装置を必要としないマイクロポンプ等を実現することが可能です。
- (2)
- マイクロスケールのアクチュエータを簡単に作製可能です。
- (3)
- 形状は鋳型で決定されるため、どのような形状にも成形可能です。
- (4)
- マロン酸等の有機酸をエネルギー源としているので、駆動源からの発熱がなく、かつ超省エネ型です。
- (5)
- マイクロスケールのアクチュエータ作製コストは、従来型のモーターと比較すれば格段に低コストです。
従来技術との比較
化学反応を駆動源として駆動するアクチュエータの実用化研究は、これまでほとんど行われてきませんでした。本研究課題は、外部装置を必要とせず駆動可能なマイクロゲルアクチュエータを実用に耐えうるレベルまで性能向上させることを目指した研究開発です。
特許出願状況
- (1)
- 特許公開2011-178843、ゲル体同士の接着方法
研究者からのメッセージ
本提案では、化学反応を直接力学的なエネルギーに変換して駆動する超省エネ型・新規マイクロゲルアクチュエータをマイクロポンプ・バルブ等に搭載することで、外部制御装置フリーのマイクロ流体素子を実用化する挑戦的な研究課題です。マイクロポンプ・バルブ等を駆動させるマイクロゲルアクチュエータは、化学反応を駆動源とするため生命体同様にエネルギー効率が高く、電場付与・光照射などを行う外部制御装置が一切不要であることを特徴としています。6年間の企業での製品開発経験を最大限活かして、早期の実用化を目指します。
発表論文:
- 1.
- 生体環境下で駆動する新規自励振動型高分子の創製と自励粘性振動の解析、原雄介、高分子論文集、Vol. 66 (2009) , No. 8, 289
http://www.jstage.jst.go.jp/article/koron/66/8/66_289/_article/-char/ja/ - 2.
- Y. Hara*, S. Maeda, S. Hashimoto, R. Yoshida: "Molecular Design and Functional Control of Novel Self-oscillating Polymers" Int. J. Mol. Sci., 11, pp.704-718 (2010).
http://www.mdpi.com/1422-0067/11/2/704/(Open Access)