斬新なセルロースの非晶化技術を応用した高付加価値型バイオマス原料製造装置の開発
この研究は澱粉やセルロースに代表される「糖質系バイオマス資源」の低環境負荷かつ簡便な前処理技術を確立し、その応用研究までを視野に研究を行っています。単に『粉砕するのみ』というセルロースの短時間かつ簡便な前処理法が確立されれば、従来のように環境負荷の高い有機溶媒に頼らずにセルロースを材料として利用できることになります。身近なバイオマス資源を真の意味で「地球に優しい資源」として有効活用することは地球環境保護の観点でも重要なことです。
研究機関・所属 | 山形大学 大学院理工学研究科 |
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氏名・職名 | 西岡 昭博 准教授 |
研究テーマ名 | 斬新なセルロースの非晶化技術を応用した高付加価値型バイオマス原料製造装置の開発とこれによるグリーン・イノベーションの実現 |
応用想定分野 | バイオエタノール原料や生分解性プラスチック、ウッドプラスチックなどの機能性材料への 応用 |
技術紹介
地球環境資源の保護という観点でも、自然エネルギーなどに代表される、より安心、安全なエネルギーへの期待が高まっています。澱粉やセルロースに代表される「糖質系バイオマス資源」から、環境に負荷を与えずに安心、安全かつ簡便にバイオマス燃料等が出来れば、このような社会的要請に応えることができます。このような背景のもと、澱粉やセルロースに代表される「糖質系バイオマス資源」を天然資源として利用することが化石資源の枯渇や地球環境保護の観点で急務です。本研究は、従来のような有機溶媒を用いない新たな木質系バイオマス資源の非晶化技術を提案するものです。これが実現すればバイオマス資源の利用法を根本から変える新たな技術となり得ることが考えられます。
研究の構想図
技術の特徴
- (1)
- 粉砕処理のみで簡便かつ短時間に澱粉やセルロースを非晶化できること。
- (2)
- 有機溶媒等を用いた環境負荷の高い処理を必要としないこと。
従来技術との比較
特許出願状況
- 1)
- 「非晶化セルロースの製造方法」(出願中)/特願:2011-269314/出願人:西岡昭博
- 2)
- 「アルファ化デンプン粉の製造方法」/特開:2009-213472/出願人:西岡昭博
- 3)
- 「アルファ化デンプン粉およびその製造方法ならびに該アルファ化デンプン粉を用いたプラスチック添加剤およびコンポジット材料」/特開:2010-215861/出願人:西岡昭博 審査請求中
- 4)
- 「α化穀粉の製造方法及び製造装置」(登録特許)/特許第4767128号(特許登録済)/
出願人:(株)山本製作所 、西岡昭博/発明者:西岡昭博 他4名
研究者からのメッセージ
本技術は澱粉やセルロースを利用する際に必要となる「前処理(非晶化処理)」を短時間かつ簡便に実現するものです。本技術から得られるバイオマス材料の応用は、バイオエタノール、生分解性プラスチック、プラスチックコンポジットなど多岐に渡ることが予想されます。今後本研究プロジェクトから生まれる技術の応用展開のため、「産」との連携を希望しています。
参考:
- 山形大学大学院理工学研究科機能高分子工学専攻 西岡研究室
- http://nishioka-lab.yz.yamagata-u.ac.jp/
発表論文:
- 1.
- 志村良一郎、清水康介、勝野圭史、西岡昭博、鹿野一郎、宮田剣、香田智則、「粉砕のみによるセルロース系バイオマス材料の非晶化と粉剤条件の影響」、日本応用糖質科学会平成24年度第61回大会(東京農工大学2012年9月)
- 2.
- 高橋陽子、幕田寿典、志村良一郎、朱瑞、宮田剣、香田智則、西岡昭博、「超音波オゾンマイクロバブルを用いたリグニンの分解」、化学工学会第44回秋季大会(東北大学2012年9月)
- 3.
- Keiji Katsuno, Akihiro Nishioka, Tomonori Koda, Ken Miyata, Go Murasawa, Yoshiko Nakaura, Naoyoshi Inouchi, Starch-Starke, 62, 475-479(2010)