風力発電システムの飛躍的な始動性及び設備利用率向上に向けた研究開発
プラズマアクチュエータから生成される機能的なジェットとファイバーグレーティングを用いた剥離検出センサを用いて、疑似的に形状を変化できる革新的な能動流体制御ユニットを備え、カットイン近傍からカットアウトまで風況に応じた幅広い速度域で剥離制御を行い、風力タービンブレードの始動性と稼働中の空力性能を向上させることで、飛躍的な設備利用率の向上を可能にする風力発電システムを構築します。
研究機関・所属 | 産業技術総合研究所 新燃料自動車技術研究センター計測評価チーム |
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氏名・職名 | 瀬川 武彦 主任研究員 |
研究テーマ名 | 能動流体制御技術を用いたバーチャルブレード構築による風力発電システムの飛躍的な始動性及び設備利用率向上に向けた研究開発 |
応用想定分野 | 風力発電システム、自動車、航空機、鉄道、船舶 |
技術紹介
小型風力発電システムの発電効率を向上するために、下記の要素技術から成る能動流体制御ユニットを開発します。
- (1)
- 誘電体バリアプラズマアクチュエータ(DBD-PA):可動部がなく、かつ軽量、柔軟であり、翼に強固に固着されて、電極形状と配置の工夫により機能的な流れを生成します。
- (2)
- 剥離流れ検出装置:ファイバーブラッググレーティングセンサ(FBG-FS)で光学的に剥離流れを検出します。
- (3)
- 計測制御アルゴリズム:剥離流れを検出し、DBD-PAを最適に制御して、剥離を抑制します。
【図の説明】小型風車への流体制御ユニット搭載図(a)正面・ブレード部、(b)ナセル内部
技術の特徴
- (1)
- 流速や風向の変動の激しい環境における風力発電システムに関し、能動流体制御ユニット(DBD-PA、剥離流れ検出装置、計測制御アルゴリズム)により安定的に向上した発電効率を実現できます。
- (2)
- 能動流体制御ユニットは風力発電システムにプレインストール、あるいは既存の発電システムに搭載可能です。
- (3)
- DBD-PAの電源は、小型、低価格、多機能であり、高電圧高周波疑似矩形波を出力でき、DBD-PAはその入力電圧波形の最適化によって誘起噴流の高速化と低消費電力を可能にします。
- (4)
- 能動流体制御ユニットによる流体機械の空力性能改善技術は、さらに自動車、鉄道、船舶などに応用でき、摩擦低減による燃費向上、排ガス清浄化による窒素酸化物などの低減、剥離流れ抑制による騒音の低減などを実現できます。
特許出願状況
1)特開2008-140584(特願2006-323509)、出願日2006年11月14日2)特開2008-152924(特願2006-336463)、出願日2006年12月14日
3)特開2008-159336(特願2006-345130)、出願日2006年12月22日
4)特開2008-270110(特願2007-114863)、出願日2007年4月24日
5)特開2009-242172(特願2008-091020)、出願日2008年3月31日
6)特開2010-061919(特願2008-225001)、出願日2008年9月2日
7)特願2010-106811、出願日2010年5月6日
8)特願2010-187710、出願日2010年8月25日
研究者からのメッセージ
流体制御ユニットを回転機械に実装し、発電効率の向上や消費電力の低減を実現するための技術の実用化を目指します。再生可能エネルギーが注目されている今こそ、企業の方々と革新的な流体技術の開発を共同で実施できればと考えています。
参考:
- (独)産業技術総合研究所 新燃料自動車技術研究センター計測評価チーム
- http://staff.aist.go.jp/t-segawa/segawa.html
発表論文:
- 1.
- 瀬川他、"DBDプラズマアクチュエータによる同軸環状噴流"、ながれ、27巻、pp65-72(2008)
- 2.
- Segawa et al.、"Wall normal jet under elevated temperatures produced by dielectric barrier discharge plasma actuator"AIAA paper、2007-784(2007)
- 3.
- 瀬川、小方、武川、"DBDプラズマアクチュエータへの入力電圧波形が誘起噴流の流動特性に与える影響"、ながれ、29巻、pp251-258(2010)