NEDO 若手研究グラント平成23年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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環境汚染のない完全オイルフリー・ベアリング/シールの開発

海水中での回転装置、食料品製造装置、半導体製造装置等で、環境を油で汚染しないオイルフリーのベアリングやシールの実現が嘱望されています。それに応える完全オイルフリー・ベアリング/シール技術が実現しました。人工関節技術の分野で開発されたポリヴィニル・フォルマールで作成した多孔質プラスチック・スポンジを軸受材料とし、糸引き性に富んだ非ニュートン流体である超高分子量ポリエチレン・グリコールを水系潤滑液としたベアリング/シール技術です。

研究機関・所属 熊本大学 大学院自然科学研究科 産業創造工学専攻
氏名・職名 中西 義孝 教授
研究テーマ名 潮流発電に適したバイオミメティック・シールの開発
応用想定分野 船舶や潮流発電等の海水中での回転装置、食料品製造装置、半導体製造装置
技術紹介

 この研究室では、医療・生活環境など生命体に関わる課題を機械工学の技術で解決する種々の研究を行っており、とくに人工関節に関する研究に力を入れています。人工関節の摺動面から発生する摩耗粉が原因で生体反応が発生する問題を解決する人工関節摺動面生成技術や、生体関節軟骨部をバイオミメティックス(生態模倣技術)の手法により人工物で置き換える技術も開発し、医療分野で高い評価を受けております。その人工物とは、フォルマール化したポリヴィニル・アルコール(ポリヴィニル・フォルマール:PVF)で作成した親水性多孔質プラスチック(図参照)・スポンジです。
 このPVFを軸受材料とし、糸引き性に富んだ非ニュートン流体である超高分子量ポリエチレン・グリコール(PEG)を水系潤滑液としたバイオミメティック・ベアリングを世界に先駆けて開発しました。産業用仕様のベアリングを作成し実機環境での試験をしたところ十分な性能と耐久性を確認することができました。また、同じ材料の組み合わせのオイルフリー・シールも可能です。
 こうした潤滑油を使用しないオイルフリー潤滑技術は、オイルによる環境汚染を避けたい船舶や潮流発電等の海水中での回転装置、食料品製造装置、半導体製造装置等に必須の技術です。

図 多孔質・連続気孔体(PVF)の形成過程

技術の特徴
(1)
水ベースの潤滑材を使用し潤滑油を使用しないので、環境を汚染しない。
(2)
優れた低摩擦・耐摩耗特性。
(3)
潤滑材の非ニュートン流体特性により、静止状態から高速状態まで低損失・低摩擦。
(4)
使用する材料はいずれも、紙おむつ(PVF)や食品添加剤(PEG)として商用ベースで使用されているものであり、人体に対し安全でありかつ安価である。
従来技術との比較

1)ベアリング

2)シール

特許出願状況

1)特開2004-321754「人工関節」 PVFを使った人工関節用ベアリング
2)PCT国際出願PCT/JP2010/068616人工関節の軸受面のテクスチャリング

研究者からのメッセージ

 ご紹介した技術は「自然に学び工学に生かす ~Biomimetic Technology~」から生まれた技術です。生体関節は重い荷物を持ち立ったままでいても、急に走り出しても、飛び跳ねても、優れた低摩擦・低摩耗を維持し続ける優れたベアリングシステムです。産業用に開発したバイオミメティク・ベアリングの基礎技術は学術的にも高い評価Aを頂いたほか、社団法人日本機械学会創立110周年事業の技術ロードマップBやFuture Climate-Engineering SolutionCにも優れた省エネルギー・低環境負荷のシステムとして取り入れていただきました。皆様から関心を寄せていただき、更なる発展を望んでおります。

  1. A 2011/4/21、日本機械学会論文賞(発表論文1)
  2. B 2007/10/26、明治記念会館:http://www.jsme.or.jp/InnovationCenter/images/baio2.pdf
  3. C 2009/9/3、Copenhagen、
     http://www.jsme.or.jp/InnovationCenter/images/roadmap_FutureClimate.pdf

参考:

熊本大学工学部 機械システム工学科 バイオエンジニアリング研究室
http://www.mech.kumamoto-u.ac.jp/Info/lab/biomech/Welcome.html

発表論文:

1.
Development of Biomimetic Bearing with Hydrated Materials, Yoshitaka Nakanishi et. al., Journal of Biomechanical Science and Engineering, Vol. 4, No. 2, 249-264 (2009)

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