NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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走査型顕微光散乱(SMILS)による超微量ゲル試料の構造解析システムの開発

ゲルの構造解析が微量の試料で極めて簡便に、定量的にできるシステムを提供できます。
多様なゲルの研究開発の促進及びその製造に際しての工程管理に有効です。

研究機関・所属 山形大学 大学院生理工学研究科 機械システム工学
氏名・職名 古川英光 准教授
研究テーマ名 走査型顕微光散乱による超微量ゲル試料の構造解析システムの開発
応用想定分野 化粧品、芳香剤、食品用吸水剤、保冷剤、細胞培養基板、ソフトコンタクトレンズ、創傷、被覆材、薬物放出剤、イオン交換樹脂、砂漠緑化材、汚泥処理剤、電池用ゲル等
技術概要

 可視光レーザービームを微量のゲル試料に照射し、その散乱光を多点分析し適切な統計処理を行うことにより、ゲルの網目サイズ分布関数を簡便に定量的に求めるシステム(SMILS)を開発しました。
 このSMILSの使用にて、

  • ・網目同士を結ぶ橋掛け点(架橋点)の粗密に関する情報
  • ・橋掛けの不完全性や欠陥に関する情報
  • ・ゲルの網目構造の不均一性に関する情報(亀裂、空隙、濃淡、異物、白濁等)

を得られ、これらの情報を有効に使うことによって、

  • ・中性ゲルの網目構造がゲルの使い方によってどう変化するかについて
  • ・温度応答性ゲルがどのように温度応答するかについて
  • ・高強度ゲルがどのように高い強度を発現しているかについて
  • ・ジャングルジムのような均一な網目構造を持つゲルの作り方について
  • ・光に応答して網目サイズを変化させるゲルの開発について
  • ・高速に体積を変化させるゲルの開発について
  • ・天然の高分子から作ったゲルの内部構造について
  • ・有機分子と無機分子を組み合わせて作ったハイブリットゲルについて
  • ・液晶に似た性質を持つゲルについて

その有効性を確認しております。

  • 【図の説明】
  • ・通常は出力300mWの352nm可視光半導体レーザーを使用し、入射光の集光部と散乱光の検出部に対物レンズを用いることで、散乱体積を直径数μmに絞ります。
  • ・散乱光成分の測定は、光電子増倍管を用いています。
  • ・走査機構により数μm間隔で測定位置を変えながら、微小な散乱体積についての動的光散乱測定を行います。
  • ・ゲルは均一ではないので、光散乱で測定しようとする場所によって異なるデータが得られます。その問題を排除するためにアンサンブル平均の厳密な測定を行います。
  • ・適切な統計処理とは、異端な測定データを除去した上で真の測定値を得るために行うものです。
技術の特徴
(1)小型な装置による非破壊、非接触の構造解析の実現
 動的光散乱法そのものの利点として、非破壊、非接触で分析が出来るほか、可視光を使うため安全でX線や電子顕微鏡に比べて小型化、省電力化が可能です。
(2)不均質、超微量、高粘度なゲル試料を広範囲な時空間領域で測定可能
 SMILSの利点として、不均質または格段に微量の試料、高粘度や複雑な形状など、これまで測定が困難だった範囲の測定が出来ます。動的揺らぎを分析する原理に基づくことでナノスケールの構造に関する情報が得られ、非常に広い時空間領域(100ns~1h, 0.1nm~数mm)をカバー出来ます。
(3)専門的知識が不要で、誰でも簡単に日常的に使用することが可能
 この研究で開発している標準化技術と自動化された統計処理により、専門家が不在でも日常的に利用して研究開発、製造管理に対して効果的なデータが得られます。
従来技術との比較
特許出願状況
特許公開
特願2004-256056 光散乱装置および光散乱測定法」2004年9月2日
研究者からのメッセージ

 ゲルの構造解析が極めて簡便に定量的に出来ることから多くの研究者に使用してもらい、その有用性を実感して欲しいと願っております。そのためにも早期の実用化を熱望しております。

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