ベリリウム銅合金に匹敵する高強度・高導電性のチタン銅合金の開発
熱処理(時効処理)の温度, 時間, 雰囲気等のパラメーターを制御することにより、Cu-Ti-Hの状態を変えることができ、導電性と力学的特性(強度、ばね性など)をコントロールできる
研究機関・所属 | 東北大学 金属材料研究所 水素機能材料工学研究部門 |
---|---|
氏名・職名 | 千星聡 講師 |
研究テーマ名 | 水素化プロセスによる高強度・高導電率チタン銅合金の設計・評価・応用 |
応用想定分野 | コネクタ、リードフレーム、特殊線材、内視鏡リードワイヤーなどへの応用 |
技術概要
チタン銅合金は水素中で熱処理(時効)することにより高強度化・高導電率化が達成されます。時効温度、時間等の条件を最適化することにより、ベリリウム銅合金に匹敵する特性値を示す事に加えて、下図にしますように、強度-導電性バランスを広範囲に変化させることが可能となります。よって、ベリリウム合金が主流であるコネクタ材料だけでなく、多様な用途に応用が期待できます。
技術の特徴
チタン銅合金の製造は従来まで真空中時効が一般的でしたが、時効プロセスに水素を用いることが本技術の新規な点です。チタン銅合金では水素中時効にすることにより、従来法では達成できなかった組織制御が可能となります。このため、時効処理条件を選択することにより、特に導電性を著しく改善することが可能となり、Cu-Ti-H合金として従来のCu-Ti合金とは異なる特性値が得られます。
従来技術との比較
上記の図に示すように、Cu-Ti-H合金はCu-Be合金、Cu-Ti合金やその他の銅合金とは異なる導電率と強度のバランスを示しています。強度-導電性バランスは広範囲であり、多様な用途開発への利用が期待できます。現在は、Cu-Be合金に匹敵する特性値を付与することを目指し研究を進めています。
特許出願状況
特願2007-100435研究者からのメッセージ
開発合金(Cu-Ti-H合金)は環境性や希少性に問題のあるベリリウム銅合金(Cu-Be合金)に匹敵する強度-導電性バランスを示します。高温安定性やばね性、耐摩耗性などではベリリウム銅合金を凌駕します。加えて、時効条件により強度-導電性バランスを多様に変化できることも特筆すべき点であり、従来にない用途開発が可能となります。本合金の構成元素はCu, Ti, Hであるため、社会環境負荷の少ない点も魅力です。
参考: