熱出力5Wの点熱源として使用できる超小型燃焼器
触媒ペーストを焼結させた多孔質触媒層を用いて高温(約1000℃)を発生できる小型燃焼器(1mm3程度)を開発しました。ガスライター並みの燃料があればいつでもどこでもエネルギー源として使用できます。
研究機関・所属 | 岐阜大学 工学部 機械システム工学科 |
---|---|
氏名・職名 | 高橋周平 准教授 |
研究テーマ名 | 多孔質触媒層を利用した超小型燃焼器の開発と携帯小型電源 |
応用想定分野 | 局所の火炎処理(熱溶着,加熱,熱硬化,接着性及び濡れ性向上など) 移動用エネルギー源、ウルトラマイクロガスタービン用燃焼器 |
技術概要
小型燃焼器は燃料の持つ化学エネルギーを、燃焼技術を通して熱エネルギーへと連続的に変換することができ、従来の電気ヒーターに代わる安価な熱源として多くの分野で注目されています。しかし、これまでは非常に小さな空間内(例えば直径3mm以下)では、熱損失や壁面での化学活性種の失活などの理由から、燃焼を安定に維持することが困難でした。本技術は直径1mm程度のセラミック管の内面に触媒ペーストを焼結させ多孔質触媒層を形成することにより、超小型燃焼器の開発に成功しました。燃料はプロパン、ブタンなどが使用できます。空気取り入れ口は、少々外気に接していればよいという程度でよく、燃料噴射のエジェクター効果で空気を吸い込みます(現在、要素試験中)。もちろん、ふさがれてしまうと、作動しません。
写真に具体的な応用例を示します。
- 左図:指で持っているのが燃焼器です。右図:サーモグラフィーによる温度分布です。
- クッキーに絵や文字を描いたものです。
- 1cm角以下の装置から,1.5V,200mW程度の電力と5W程度の熱が利用できます。
- マイクロコジェネを組み込んだ無人センサーのモックアップ。100円ライター程度の大きさ,価格で連続24時間作動.燃料補給により継続的に使用できます。
緑色部分が空気取り入れ口です。
技術の特徴
- (1)微小空間内で安定燃焼
- 消炎直径以下の微小空間内(管直径1mm以下、燃焼空間0.5~1.5mm3程度)で安定燃焼可能。0.3Wから10Wと幅広い出力変動にも耐えます。
- (2)良質な熱エネルギーとして利用可能
- 非常に大きな発熱密度(5GW/m3)・1000℃以上の高温ガス噴流を実現した良質なエネルギー(エクセルギーが高い点熱源)として利用可能。
- (3)低コスト
- 燃焼器部分の初期コストが安価。化石燃料が利用できるのでランニングコストも安価。
- (4)コージェネ(分散型エネルギーシステム)
- 熱とともに200mW程度の電力を発生が可能。
従来技術との比較
リチウムイオン電池と比較すると熱電変換装置を含めて同じ重量で1.5倍の出力が得られます。特許出願状況
特許公開2008-039254 マイクロコンバスター及びマイクロ発電装置研究者からのメッセージ
燃焼器部分は無償提供できます。下記の分野に応用が可能と思われますのでご希望の方はご連絡下さい。
1.局所の火炎処理による接着性や濡れ性の向上(材料表面処理)
2.フィルムや有機材料の溶着や穴開けなどの加工技術関連
3.局所の熱硬化や熱変性,はんだ付けなど
参考:
・前回のプレスリリース- 投稿論文
- (1) Takahashi, S., Yamada, N. and Wakai, K., 5W Microcombustor with a Sintered Catalytic Layer and Application to Micro-cogenerator, Proc. 7th ASPACC, ID:10082(CD-ROM), Taiwan, (2009)
- (2) Takahashi, S. and Wakai, K., Microcombustor with a sintered porous catalytic layer, 45th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit, AIAA 2009-5246, (2009)
- (3) Sugie, K., Takahashi, S., Ihara, T., Wakai, K., Micro-cogeneration coupling microcombustor with thermoelectric module, Proc. 8th ASPACC, India, (2010) to be published