NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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新しい原理によりシンプルでマルチパスに強い受信システムを実現

新しい原理のエスパーアンテナ制御方法により、RF回路および復調系が単一のOFDMダーバーシチ受信方法を開発し、携帯端末、1セグ受信機、無線LAN端末の受信感度と信頼性の向上を果たした。

研究機関・所属 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
氏名・職名 岡田実 教授
研究テーマ名 超高信頼センサネットワークによる港湾サーベイランスシステムの構築(エスパーアンテナによる改良OFDMダイバーシチ受信方法)
応用想定分野 携帯端末、1セグ受信機、無線LAN端末および無線ネットワークシステム
技術概要

 データを中継により伝送する場合、1つの経路を決定しその経路が常に使用されます。しかし、無線通信環境は、周囲の遮蔽物や反射物となるものが時々刻々と移動・変化します。そして、マルチパスフェージング現象により受信信号の振幅・移送が変動し、また受信シンボル、先行シンボルが重なる符号間干渉が生じます。
 このような環境において無線通信の信頼性を高めるため、従来はマルチパスフェージング現象に対しては、ダイバーシチ効果を利用し、マルチパスフェージング現象を軽減してきました。また符号間干渉を緩和するためには、エスパーアンテナを併用することも行われてきました。 しかしそのためにはアンテナを複数用い、RF回路およびFFT回路を複数設けFFT後合成するダイバーシチ方式を用いることが必要で、消費電力、取り付け配線が複雑、価格の上昇などの点で問題がありました。

 本研究では、新しい原理のエスパーアンテナ制御方法によりRF回路および復調系が単一のOFDMダーバーシチ受信方法を開発し、従来の課題を一度に解消できるようになりました。

  • 図1 本研究の受信端末ブロック図
 図のように本研究成果を用いることにより、1組のRF回路およびFFTでダイバーシチ効果を得ることができ、消費電力削減をはじめ表1に示します通り、多くの効果が期待できます。
技術の特徴
(1)構成と制御方法
 エスパーアンテナはメイン素子とサブ素子より成り、受信信号はメイン素子とサブ素子の合成になります。ここでサブ素子を可変容量素子(VC)により終端し、このVCを制御し受信信号品質が高くなるようにするエスパーアンテナを構成します。
 本研究では、VCをキャリアのスペーシング周波数により変化させ、得られた受信信号から得られるサブチャネル信号を同相合成できるようにしました。そして受信する各々のサブチャネルの出力を同相合成し、受信品質を向上させることが可能になりました。
(2)効果
 サブチャネルの同相合成方法により、受信信号のビットエラー特性は飛躍的に向上しました。従来はダイバーシチ効果を得るため、RF回路およびFFT回路を複数有するFFT後合成ダイバーシチが用いられてきましたが、消費電力の点て問題がありました。本技術を用いることで、1組のRF回路およびFFTでダイバーシチ効果を得ることができ、消費電力削減効果が期待できます。
従来技術との比較
特許出願状況
2件 PCT出願済み
研究者からのメッセージ

 当初、スペインの港湾における通信の信頼性を高めるために、スペインの政府関係団体と共同で研究を行ってきました。この研究は通信システムに関する研究であり、電波障害の多い港湾の通信における信頼性を向上させるためのものです。

 このような無線通信システムの研究に加えて、さらに、本研究内容はローカルな通信環境を改善するだけではなく、802.11無線LAN、地上デジタル放送受信機(12セグ、1セグ)に応用することが可能であり、通信キャリア企業、民生の受信機製造企業、車載用機器製造企業まで幅広く連携し応用していただけると確信しております。

参考:

奈良先端科学技術大学院大学 岡田研究室
http://agano.naist.jp/mediawiki/

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