NEDO 若手研究グラント平成21年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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曲がり管自体をセンサプローブとして利用した超小型質量流量計の開発

曲がり管自体をセンサプローブとして、曲がり管内の流体に生じる遠心力で発生する管路表面の歪を利用することで、内部の液体にセンサが非接触で流量計測することができる独自の技術を開発しました。血流量計だけでなく曲がり管を有している他の産業分野(マイクロ流路の流量計や燃料電池における水素の流量計など)への応用も可能な計測技術であります。

研究機関・所属 産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 人工臓器グループ
氏名・職名 小阪亮 研究員
研究テーマ名 曲がり管を利用した超小型質量流量計の開発
応用想定分野 医療機器分野(人工心臓)、産業機器への組み込み、化学プロセスへの組み込み、排気ガスなどの気体流量計測
技術概要

 管路内部を流れる流量を計測するため、曲がり管自体をセンサプローブとして利用した、超小型質量流量計の開発を行っています。曲がり管内の流体に生じる遠心力による静圧上昇を曲がり部で計測し、遠心力の影響の少ない直管部で静圧補償することで流量を計測することができる独自の技術を開発しました。管路内部の流体に非接触で流量を計測するために、センサ素子には、歪ゲージを採用し、静圧上昇を管路壁の歪として計測します。これまで、基礎研究として、数値流体解析と構造解析を利用し、連続流や拍動流に対する最適な計測位置や計測性能の評価を実施し、定常流や拍動流に対する計測が可能であるとの結果を得ました。
 具体的な応用例として、人工心臓での利用を検討しました。安心安全な人工心臓を実現させるためには、人工心臓の血流量を適宜計測することが重要であります。しかし、市販の血流量計は、機器が大型であるため、長期間患者に埋め込み使用することは困難であります。本研究で、数値流体解析と構造解析結果を元に、人工心臓と生体側の接続に使用されている曲がり管自体をセンサとして利用した非観血の超小型質量流量計として試作を行い、市販の流量計と同等の計測性能を実現することが出来ました。
 また、本流量計は、血流量計だけでなく曲がり管を有している他の産業分野への応用も可能な計測技術であります。学会発表後、マイクロ流路の流量計や燃料電池における水素の流量計に応用可能かの問い合わせもあります。


【図の説明】曲がり管の数値流体解析と、試作した質量流量計
数値流体解析を利用し、曲がり管内の静圧分布を計算した結果、曲がり部で静圧が上昇することがわかりました(左図)。数値流体解析の結果を元に、センサに歪ゲージを利用した質量流量計を試作しました(中央図)。市販流量計と計測性能を比較した結果、ほぼ同等の性能を確認しました(右図)。

技術の特徴
(1)
液体が流れる管路を曲げて、流体により生じる遠心力から流量計測が可能となります。また、質量の計測も可能です。管路面の歪をリアルタイムで流量として換算するため、他の血流量計より応答性能も良い。
(2)
曲がり管で生じる遠心力による静圧上昇を利用した点にブレークスルーポイントがあり、他に存在しない独自の技術であります。
(3)
作動流体が腐食性流体であっても、管路表面の歪を利用することで、内部の液体にセンサが非接触で流量計測が可能となります。
(4)
流量計測に可動部が存在せず構造がシンプルため、長期耐久性と高信頼性を実現できます。
(5)
血流量計だけでなく曲がり管を有している他の産業分野への応用も可能な計測技術であります。
従来技術との比較
特許出願状況
当研究所の山根と申請
研究者からのメッセージ

 液体が流れる管路を曲げて、流体により生じる遠心力による静圧上昇を利用して流量計測が可能となりまし た。この点にブレークスルーポイントがあり、他に存在しない独自の技術であります。管路面の歪をリアルタイムで流量として換算するため、他の流量計より応答性能も良く、他の産業分野への応用も可能な計測技術であります。
 新規流量計の実用化に向けて、各企業と使用用途や要求仕様、課題抽出などに関して、意見交換や技術相談、共同開発を提案します。

参考:

産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 人工臓器グループ
http://unit.aist.go.jp/humanbiomed/artiforg/index.html
研究員情報
http://staff.aist.go.jp/ryo.kosaka/index.html

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